沼倉愛美ラストライブへ「全員が笑顔で終えられたら」 ベスト盤「みんなで!」リリースインタビュー

声優アーティストとして2016年7月から活動を続けていた沼倉愛美が、2019年11月にアーティスト活動の終了を発表。2020年2月12日に、これまでの活動での全楽曲を収録したコンプリートベストアルバム「みんなで!」をリリースする。今回のアルバムの新規収録曲やこれまでのアーティスト活動を振り返っての思い、そして16日に開催されるラストライブへの取り組みについて聞いた。

アーティスト活動終了の理由とは?


──昨年2019年11月にアーティスト活動終了を発表されました。こと声優アーティストでこうしたことを改めて明言する方はあまり多くないと思うのですが、この発表については沼倉さんご自身での決断によるものだったのですか?

沼倉愛美(以下、沼倉) はい。最終的に活動終了を発表すると言ったのは私です。今までの活動中もプロデューサーを含めスタッフさんはずっと、「最終的に沼倉さんが決めたことでいい」というスタンスでいてくれました。私の気持ちがうまく伝わるかどうかはわかりませんが、こうして明確に区切ったほうが自分たちにとっても応援してくれる方にとっても新しいことに歩き出せるし、それも含めきちんと伝えたほうがよいのではと考え、発表いたしました。発表することで怖い気持ちもありましたが、そのほうが沼倉愛美らしいかなと、今までの自分のしてきたことや、付いてきてくれてた人を信じてみようかなという気持ちでした。

──アーティスト活動を終了するそもそもの理由を聞いてもいいですか?

沼倉 大きなきっかけとか理由というのはなくて。むしろ、ここまで続けてこられたことのほうが予想外だったんです。こんなにたくさんCDを出したり、ライブやイベントを行なうといった、この状態が私の予想を超えたことでした。自分自身としては、よくぞここまでできたという感覚。辞めるとなるとマイナスなイメージでとらえられがちなのですが、それがあまりなくて、私のできること、これから続けたいと思うこと、求められてることなどを総合的に考えたうえで決めました。

──デビューのときは、どのぐらいの活動期間を考えていましたか?

沼倉 デビューしてから1stライブ「My LIVE」(2017年8月)でたとえ終わったとしても、きちんと自分が納得できるようなものを作ろうというつもりで始めました。その後、いつどこで「沼倉さん、すいませんけど、ここで終了です」と言われたとしても、満足だと言えるように1つひとつ大切に作っていこうと決めていました。実際、当時はあの後は何も決まってなかったから、そこでフェードアウトするということも、ないとは言えないと思っていました。それでもいいと言えるようにがんばって作ろうと思っていましたし、その後どの地点でもそれは同じ思いでした。


──その都度都度で完全燃焼するつもりでいた。

沼倉 はい。それがたまたま今だったのだと思います。

──アーティストとして沼倉愛美はどんな存在だったとご自身では思いますか?

沼倉 アーティストというよりも、私は気質的にはクリエイターなのかなと思いました。モノを作るのが好きで、何だったら一番前に立って歌うのは自分でなくてもいいというか、モノづくりの歯車の中にいられればいい。フロントマンにこだわる性格じゃないんですよね、きっと。 だから声優という仕事をやっているし、もちろん演じるのが好きっていうのもあるんですけど。どこまで行っても役者としての自分が根底にあるんだなということに気づけたのは、アーティスト活動で得たもののひとつですね。それがアーティスト活動を辞める理由というわけではありませんが。

──アーティスト活動の経験はご自身にとってどのようなプラスになったと思いますか?

沼倉 人がどのくらい喜んでくれるんだろうかとか、どのくらい楽しんでもらえるんだろうか、ということを考えるようになりました。当たり前のことと言えばそうなのですが、それまでは自分がいいと思うことを優先していたと思うので。今もそういう部分はありつつ、割合が変わって、人のことを考えられるキャパが増えたという感じです。

──このたびリリースされるコンプリートベスト「みんなで!」は、これまでのすべての楽曲が収められた2枚組のCDに、ミュージッククリップのBlu-rayが1枚というパッケージで、曲もリリース順に収録されるというヒストリカルな1枚になりました。収録曲の中には、新曲「みんなで!」もありますが、ファンクラブイベントのみで発売された2曲も含まれていますので、そちらの曲のお話から聞かせていただけますか?

沼倉 「Come on New World!!」は、最初のファンクラブのイベント「ぬー民の集い」でのリリースなので、2年前の私の誕生日ですね。ファンクラブの名前が「AREA NU」で、その会員が「ぬー民」ということも、ある程度定着してきたので、アットホームなその世界観を表現しようと考えて作りました。とりあえず騒げる曲をと、外ではいろいろあるけど、ここでは自分の楽しいをみんなの楽しいところとして増幅させていこうよ、みたいなことを歌っています。

──もう1曲の「わたしたち」は声優の諏訪彩花さんとのコラボレーションですが、これはどんな風に?

沼倉 「ぬー民の集い」の2回目で、今度はゲストを呼んで、そこだけの2人の特別な曲があってもいいかなって思って。それで歌詞を書いてふたを開けたら、私と諏訪そのものみたいな感じになっちゃって、よりその場だけの特別感が出たと思いますね。

──書いていくうちに諏訪さんに寄っていった。

沼倉 そうですね。テーマとしては、同い年の2人ですごく仲がいいけど先輩後輩でもありという、このポジションを言い表す言葉はいろいろあるけれども、どれも100%しっくりくるわけではなくて、何て呼べばいいんだろうということを書いています。これはほかの人にも抱く感情ですが、かけ合い風の歌詞にしたら、私と諏訪でないと成り立たないバランスの形になりました。

──収録はそれぞれに?

沼倉 はい。仮歌で私がなんとなく歌ったのを諏訪に渡して、楽しそうにしてくれれば表現はお任せみたいな感じにしています。それを聞きつつ私がレコーディングする形でした。彼女は何でもできるので、歌の表現においても引き出しをいろいろと持っている人ですが、私といるときのそのままの諏訪彩花の感じで歌ってくれてたので、ありがたいなと思いました。

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