アニメライターによる2020年冬アニメ中間レビュー【アニメコラム】
2020年冬アニメを中間レビュー! まさかのアニメ化で話題をさらった「異種族レビュアーズ」、アニマル学園コメディ「群れなせ!シートン学園」、地下アイドルのトップヲタを追う「推しが武道館いってくれたら死ぬ」、名古屋愛にあふれる「八十亀ちゃんかんさつにっき 2さつめ」、18年に渡って連載された人気マンガ原作「ドロヘドロ」を紹介します。
あらゆる種族とエッチをするためスケベな店へ通う冒険者が、一糸まとわぬ女性キャラよりも眩しく見えるのは、彼らの姿に自分自身の過去を重ねてしまうからだろう。店の評価をあれやこれやと語り合うレビュアーズは、オタ同士でたわいもないアニメトークを繰り広げてきた我々に瓜二つなのだ。
仲間と一緒に好きなものを語らう時間は永遠のように思えるが、「異種族レビュアーズ」はそんな日々にも終わりが来ることを示唆している。人間より寿命の長いエルフの存在はのちに訪れる別れを嫌でも意識させるし、メンバーに加わった天使には「天使の輪が直るまでの間」という制限時間が定められている。エンディングテーマに「音頭」という、ハレを共有するための音楽を用いたことも興味深く、祭りはいつか終わってしまうものだ。そして地上波での予期せぬ放送中止によって作品を楽しむ機会さえ失われる。アニメを見続けるのは怒張を保つのと同じぐらい難しいことを教えてくれる一作。
さまざまな哺乳類が通う私立シートン学園を舞台に、動物嫌いの人間・間様人(マザマジン)が生徒たちの悩みを解決していく学園コメディ。キャラクターの性別によって表現が異なっており、男子生徒はほぼ動物そのまま、女子生徒はいわゆる萌え擬人化がなされている。提供に名を連ねた群馬サファリパークをはじめ、多くの動物園が制作協力をしていることもあってか、モブの動物たちもウザいくらいにイキイキしていて飽きさせない。
各話♂動物役という聞き慣れない役職には、津田健次郎をキャスティング。その名の通り、全話数でオスの動物を担当しており、ゴリラ、クマ、ネズミ、キリンなど、何でも演じてしまう勢いだ。次回予告では声優陣が動物の鳴き声を披露するという江戸家猫八チックな試みも、どこか懐かしい作風にマッチしている。
岡山県で活動するアイドルグループ「ChamJam」。その中の人気最下位メンバー・市井舞菜に全人生を注ぎ込むトップヲタ・えりぴよの生き様を描いたアイドルコミックを映像化。アニメのライブシーンは、観客の顔が描かれずにペンライトの光として表現されることが多いが、それは大きな会場の話。ChamJamは地下アイドルのため観客を視認できるような狭い小屋でしかライブができず、それゆえにヲタの姿1人ひとりが印象的に描かれている。
だが第8話ではライブ会場が停電。えりぴよの機転で観客たちがライトの光で照らして出口まで先導することになる。ここではヲタの姿は見えず、ライトの光として映し出されている。ChamJamにいつか訪れるかもしれない大舞台でのライブを予行演習したかのような美しいシーンだ。えりぴよとChamJamの行方を見守りたい。
愛知県に転校してきた陣界斗(じんかいと)が、生粋の名古屋っ子・八十亀最中(やとがめもなか)に名古屋の魅力を伝授されるショートコメディ。全編にわたって名古屋の豆知識が詰め込まれているだけでなく、主演の戸松遥を筆頭に、メインキャストはキャラクターと同じ出身の声優が担当。ナチュラルな方言も魅力的だ。
本編に登場する食べ物や名所は実名で登場。第2期ではご当地アイドルも実写で出演し、オール名古屋でアニメ化を盛り上げている。
単に地元を讃えるだけではなく、「名古屋城はガッカリ感が強い」と本音もぶちまけるところからも懐の深さが感じられる。さらにエンドロール後には東海圏のローカルCMもオンエア。お茶の間をいつの間にか名古屋に変えてしまう作品だ。
頭をトカゲにされてしまった記憶喪失の男・カイマンが、本当の顔と記憶を取り戻すため魔法使いを狩っていくダークファンタジー。「おいでませ、混沌」というキャッチコピーにふさわしく、本編は3DCGと手描きがミックスされており、どちらなのか見分けが付かないほど。魔法使いが出す煙によってざらついた街並みの背景美術と相まって、独特のトリップ感を堪能できる。
カイマンの謎を追うストーリーも気になるが、ゾンビが出てきたり野球をやったりと、脇道に逸れたエピソードも一興。オープニングではギョーザを作ったり、エンディングではゲームのパロディをしたりと、どこか人を食ったような世界観に身をゆだねたくなる。
(文・高橋克則)
(C) 天原・masha/株式会社KADOKAWA/異種族レビュアーズ製作委員会
(C) 山下文吾・Cygames/アニメ「群れなせ!シートン学園」製作委員会
(C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会
(C) 安藤正基・一迅社/八十亀ちゃん2製作委員会
(C) 2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会
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