プラモデルなのか、ゲームグッズなのか? 「1/12テーブル筺体」を発売した株式会社ヘルメッツって何者だ?【ホビー業界インサイド第51回】

1/12スケール、80年代のゲーム筺体のプラモデル……「どうせ可動フィギュア向けのアクセサリーでしょ?」と思われてしまって当然だろう。しかし、株式会社ヘルメッツのプラモデル「1/12 テーブル筺体」は小型コンピュータ“Raspberry Pi(ラズベリーパイ)”を内蔵可能、レトロゲーム愛好癖をくすぐる気のきいた仕様で、マニアから一目置かれている製品だ。
お手軽なプラモデルとも、懐かしグッズとも受けとれる、この不思議なキット「1/12 テーブル筺体」の正体は? 株式会社ヘルメッツの兒玉徳行代表に、製品開発の背景をうかがった。

ゲーセンとガンプラにW直撃されたITエンジニアが会社を設立


──ゲーム筺体のプラモデルって、以前からチラホラ見かけてはいたのですが……。

兒玉 ええ、ゲーム筺体のミニチュアは思ったより歴史がありまして、WAVEさんが1/12でプラキットを発売してコナミさんもプライズ用玩具としてシリーズ化していました。私もそれらの製品に入手しましたが「……もっと欲しい!」「……もっと欲しい!」という想いで、自分の会社を設立して製品開発するに至りました。

──ヘルメッツさんの業務は、もともと、どういうものだったのですか?

兒玉 ミニチュア製品やPC関連グッズの企画・開発・販売です。設立してから4年ほどになりますが、当初からオフィシャルグッズとして、ゲーム筺体のミニチュアを発表しております。


──プラモデルというよりは、「ミニチュア」と呼んだほうがいいのでしょうか?

兒玉 私はゲーセン直撃世代であると同時に、ガンプラも直撃世代でして。ガンプラの発売される以前も「宇宙戦艦ヤマト」のメカコレやLSの100円プラモを小学生のころから作っていました。

──すると、ゲーセンとプラモデル両方の原体験が、いまの商品群につながっているんですね? タイトーの1/12「ダライアス筐体 スマホスタンド」について教えてください。

兒玉 ヘルメッツ初期のヒット商品で、スマホでゲーム画面を表示することができるミニチュアです。ミニチュアに液晶を組み込むことは、以前から取り組んでいましたが(商品として)すべて内蔵するにはコストがかかってしまう。そこでこの商品はスマホに映像表示を任せ、コンテンツはYouTubeなどで再生。すると、リアルに楽しめるのです。上から覗くと、チラッと下の画面が見える点も「そうだった、このゲームとくればミラーだったよね」と、ファンなら膝を打つわけです。


──このキットは、組み立てるのは簡単なんですか?

兒玉 この商品は塗装済み完成品としてリリースし、タイトーさんのオフィシャルストアで販売していただきました。製造は1つひとつ、手作業による組み立てです。

──えっ? 工場ではなく、社内で製造したんですか?

兒玉 ええ、社内にあるレーザーカッターで木製部品を切り抜いて。実際のゲーム筺体も木製でしたから、触ったときにとても雰囲気が出るんですよ。

──私が初めて見たヘルメッツさんの製品は、「X68000」のプラキットでした。中に“Raspberry Pi”(ラズパイ)をセットできるという意味がわからなくて……。

兒玉 ラズパイは、イギリス製の学習用小型コンピュータです。基板の状態で売られており、ユーザーは各自でケースを用意して使うのですが、ヘルメッツでは80年代に売られていたシャープ製パソコン「X68000」を、ラズパイ用のミニチュアケースとして開発しました。いまゲーム業界で流行っている、“○○ミニ”風に楽しめるプラモデルです。ラズパイのボードが入る大きさから逆算したので、スケールは1/4になります。1/3ならボークスさんのドールと合わせられたでしょうね。

──兒玉さんは、ホビー業界出身なのですか?

兒玉 いいえ、私の前職はITエンジニアで、どちらかというとサーバーとかデータベースをお金にする仕事でした。模型づくりは単なる趣味だったのですが、気がついたらこんなことになっていました。

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