【Steam】自作PCからガチ書道まで! マニアックな作業シミュレーター系PCゲーム特集

アキバ総研をご覧の皆様、はじめまして、百壁ネロと申します。ヒャッカベと読みます。

ゲーム好きのフリーライター兼小説家でございます。クリアし終わらない内から次々とゲームを買ってしまうので、積みゲーが300本以上あったりする人間です。

そんな僕ですが、昨年の夏頃にノートPCを新調しました。ゲーマーがPCを買い換えるとなると、そりゃあゲーミングPCが選択肢の先頭に来るわけで、今、この記事はMSIの「GL63 8SE」というキーボードが赤く光り続けるギークでカッコいいゲーミングノートPCから執筆していたりします。
さて、PCを新調した僕が、基本的な設定をひと通り終えてまず始めにしたことはというと、ネットサーフィンでも動画を見るでもなく、Steamの登録と導入でした。

PCゲーマーの方なら言わずもがなかとは思いますが、Steamというのは、ざっくり言うとPCゲームのダウンロード販売が行われている大型プラットフォームです。これまで、Steamでしか遊べない面白そうなゲームの情報が入ってくるたびに、自分のロースペックな古いノートPCを前に涙を流していた僕ですが、ゲーミングノートを手に入れてこれで思う存分Steamゲーが遊べる!と喜び勇んだのが、2019年・夏の良き思い出です。おかげさまで、PCを新調した翌日にはSteamライブラリに10本以上のゲームが積まれておりました。

さて、筆者とSteamの馴れ初めについて知っていただいたところで、今回はそんなSteamゲーの中から、「作業シミュレーター系ゲーム」特集と題して、おすすめの3作をご紹介していきたいと思います。

項目


Steamはシミュレーターゲームが異常にアツい


シミュレーションゲームといえば、「シムシティ」や「信長の野望」などを思い浮かべる方が多いかと思いますが、今回扱うのは、これらシミュレーションゲームとはちょっと違う“シミュレーター”ゲームです。 そう言われてもパッと思い浮かぶものがあまりないかもしれませんが、たとえばヤギを操作して飛んだり跳ねたり舌を伸ばしたりして大暴れする「Goat Simulator」なんかは、PS4やSwitchにも移植されているので見たことがある方も多いのではないでしょうか。

また、実在する農機をガンガン動かせる本格農業シミュレーター「Farming Simulator」は、現在なんとナンバリング20作目までリリースされている大人気作。こちらもコンシューマー機向けに移植されています。 要するに、シミュレーションゲームよりも、もっと「(それを)体験する」という部分にフォーカスしたゲームが「シミュレーターゲーム」というわけです。


このように、シミュレーターとひと言で言っても、ガッツリ農業的な本格派からヤギ大暴れ的な怪作・珍作まで幅広くあるわけですが、何を隠そうSteamでは、検索窓に「Simulator」と打ち込めば大量ヒットするぐらいにこのシミュレータージャンルが異常なアツさを見せているのです。 というわけで、さっそくSteamのディープな「シミュレーターゲーム」の世界を覗いていきましょう。


1:好きな人にはたまらない自作PCシミュレーター「PC Building Simulator」


2019年の夏にゲーミングノートPCを購入した筆者ですが、PCについて詳しくないため、購入の際は家電量販店の係員の方に「えーっと、あの、ゲームの配信とかするんですが、それでも大丈夫な感じのレベルの、ゲーミングノートPCが欲しくて……」と、この上ないたどたどしさで要望をお伝えし、現在使っているPCをおすすめしていただきました。(ちなみにデスクトップPCにしなかった理由は,
ちゃぶ台が作業スペースな人間なので置く場所がないからです……)
もっとPCに精通した人であればゲーミングデスクトップPCをチョチョイと自作してしまう、なんてこともできてしまうわけで、疎い僕からすれば天上人のように思えてしまいますが、さて、ここで今回ご紹介するゲーム「PC Building Simulator」の登場です。



本作はその名の通り、自作PCのシミュレーターゲーム。
このゲームには、キャリアモードとフリービルドモードという2つのモードがあります。
フリービルドモードは、ゲーム中に登場するパーツやツールを自由に使って好きなようにPCの構築が楽しめるモードなのですが、筆者は先述のとおり、まったくそういった類の知識がないため、ここはキャリアモードを選択。 こちらは、コンピューター修理企業のオーナーとなり、お客さんから舞い込んでくるさまざまな依頼を解決してお金を稼いでいくというモードです。



ゲームをスタートすると、そこは自分のオフィス兼作業場。
ゲーム内のPCに、お客さんから依頼のメールが来るので、それを引き受けて作業をこなしていきます。ちなみにこのゲーム内PC、自分が実際に使っているPCの壁紙が自動的に設定されるようで、自分のPCの中で自分のPCを操作している不思議な感覚になったりします、というのは余談。


依頼内容は、PCのウイルス駆除、ホコリの掃除、グラフィックカードの交換、ディスクの増設などさまざま。依頼を引き受けたあとは、送られてきたお客さんのPCを作業机に移動させて作業開始です。 ネジやふたやケーブルや各種パーツの取り付け・取り外し、電源操作、ウイルス駆除ソフトのインストール、必要なパーツをネットショップで購入……と、細かい部分も含めてすべて自分で操作します。なるほど、これぞシミュレーター。 ウイルス駆除なんかは、USBメモリーを挿してインストールして……とサクサク簡単に作業できましたが、グラフィックカードの交換ぐらいになると、知識のない筆者にはかなりの難問。へえーグラフィックカードってこういうとこに付いてるんだ……、あれ? 外したはいいけど付けらんない、なにこれ手順どうするの……? としばし悪戦苦闘しました。(ちょっと諦めかけましたが、ちゃんとできました)



そしてこのゲーム、なんと実際のPCパーツメーカーが多数協賛しており、実在のパーツをゲーム内で使用することも可能なのです。
本作に寄せられたレビューの中には、「初自作PCだったけど、ゲームの通りに自作したら普通に作れた」といったものもあり、現実でPCを自作するための予行演習的な使い方もできてしまうようです。
まさに、ゲームの枠を超えた、本格的なシミュレーターと言えるでしょう。

2:ろくろを回せ! 壺を焼け! 展示せよ! 「陶芸マスター」

「陶芸マスター」は、ずばり、陶芸シミュレーターゲームです。 陶芸のシミュレーターと聞いた時点で、大多数の人が「ろくろ回すんだろうな」と想像するかと思いますが、はい、その通りです。 プレイを開始すると、まずメイソンという人物からの手紙を読む画面になります。



どうやら僕ことneroは、突然、陶芸館なる施設を任されることになったようです。しかも「うまく経営してほしい」とのこと。メイソン氏、高望みでしょうそれは……、やったことないよ陶芸なんて……。 と、尻込みする暇もなく、次の画面に移ると、もうすでにろくろで粘土が回っています。ぐるんぐるんと。 これが、なかなかきれいなグラフィックでリアルに表現されています。背景も細かに描かれていて、まさしく陶芸工房といった様子。



チュートリアルの指示に言われるがまま、回る粘土を手で伸ばしたり引っ張ったりするかのごとく、マウスを上下左右にじっくり動かしていくと、目の前で回るブツがなんだかいい感じにそれっぽい形になっていきます。おいおい、僕これ陶芸の才能あるんじゃないの……? メイソン氏、僕に任せて正解だったな! うぬぼれつつ、続いては「焼く」工程へ。



真っ赤な空間の中で焼かれる壺が目の前に現れました。なるほど、これが焼窯(やきがま)のようです。
とは言え、ここで僕は何をすれば? 焼き上がるのを待ってるだけじゃないの? と思いましたが、このパートはミニゲームになっています。
マウスを押すタイミングを調整して、ゲージの光る範囲に合わせます。そうすることで焼き上げるための適切な温度を保つというわけです。



焼いたあとは染料などを塗る工程。
ここもチュートリアルに言われるがままに、なんとなーく線を引いていきます。すると「とても良い!」との評価。ほんとか……?
塗りを終えたら、もう一度焼きます。ちなみにこの焼く工程は、ミニゲームではなくムービーのみ。調べてみると、最初の焼く工程を「素焼き」、二度目を「本焼き」と呼ぶそう。聞いたことあるぞ……。

というわけで、陶芸品が完成しました。名前を付けて、壺の評価が発表されます。
なるほど、こういうゲームね……と思いきや、なんと作った壺が展示されてしまいました。



ああーそうだなるほど、そう言えば確かに僕は陶芸館を任されたんだった、けどいやいやいや! これは飾って人様にお見せするようなもんじゃないって! 名前もすごい適当につけちゃったし! とか言いながらも、筆者の「はじめてのつぼ」、そこそこ訪問者が見てくれました。やさしいな、みんな……。


と、こんな感じでいい出来の陶芸品を作って飾って訪問者を増やし、稼いだお金で新しい粘土や模様などを購入して、もっといろいろな作品を作れるようになっていく、というのがこのゲームの主なルーチン。410円という低価格のゲームながら、なかなかやれることが多く、決して安っぽい作りではない本作。特にろくろ回しは、簡単そうに見えて、自分の思ったような形を作るのは難しく、マウスを握る指先に思わず全神経を集中してしまう緊張感が味わえます。 本作のSteamコミュニティを見てみると、本当に博物館に展示されていそうな立派な壺や、はたまた「ドラ○もん」や「カー○ィ」などのキャラ壺を焼いている方もいて、このゲームの奥深さと自由度の高さがうかがえました。「水曜どうでしょう」ファンの筆者としては、いつか「世紀末大革命恋愛大皿」を焼いてみたいなと思っているのですが、はたして実現できる日は来るのでしょうか、半角斎先生……。

3:墨を磨るところから始める本格書道シミュレーター「Chinese Brush Simulator」

書道のゲームといえば、「リズム天国」の中のゲームのひとつ「リズムお習字」か、PS2のパーティーすごろくゲーム「ガチャろく」に収録されていた「書道」がパッと思いつく筆者ですが(どちらも「超」がつく名作です)、本作「Chinese Brush Simulator」は、名前にある通り「毛筆」をテーマにしたシミュレーター。 筆圧のコントロールを尋常じゃなく忠実に再現していたりするのかな……と予想しつつ、ゲームを開始すると、いきなり中華風の部屋が目の前に広がります。え、書道は……?



何をしたらいいかわからず、しばらくカメラをぐるぐるしていると、机の上に中華風の書道道具があれこれ置かれていることに気が付きました。なるほど、ここで書道をしろということか……、じゃあ何か書いてみよう……。机の左側に置いてある壺の中に丸まった半紙を発見し、机の上に広げます。 ということは、次は墨か……。机の上を探してみるも、筆者の思い描く“墨”がありません。ほら、あの、学校の書道の授業で使ったボトルに入った墨汁……って、ああ、そうだ。思い出しました。このゲームは本格書道シミュレーター。墨汁なんて甘えは許されません。 そう。固形の墨を水と混ぜ合わせて、硯(すずり)で磨(す)るのです。 中華風の水差しを傾けて硯に水を注ぎ、固形の墨をつかんでマウスをグリグリして擦って溶かし、ようやく墨汁が完成しました。



机の上の筆を掴んで墨に浸し、ついに念願の書道開始。ちなみに墨の上げ下げや筆の上げ下げなどはすべてマウスのボタン長押し時間によって操作します。 ふうとひと息、半紙に向かって静かに筆を下ろし、精神を集中して、ゆっくりと筆を動かしていきます。 ああ、そうか、この静けさと集中こそが書道の真髄……。これはもはやゲームを超えた禅の世界……。

こうしてでき上がったものがこれです。



「総研」が入りませんでした。筆も一番細いの使っちゃったからなんかサインペンで書いたみたいになってしまいました。難しいですよね、書道……。

というわけでこの「Chinese Brush Simulator」、何から何まで手作業でやらなくてはいけない、渋めのシミュレーターゲームなのでした。 本作のSteamコミュニティを見てみると、同じマウス操作でやったとは思えない達筆すぎる作品や、どうやって描いたのかほんとに聞いてみたい巧みなイラストなどなど、多数の作品がアップされていますので、興味のある方はぜひ見てみてください。どんなゲームにもプロっているんだな……と思うこと必至です。

おまけ。



書道部屋から歩いて出た先にある庭園を撮ってみました。書道と無関係な部分であるにも関わらず、なかなか作り込んであります。というか、僕はどこで書道してる設定なんだろう……、宮廷的な?

シミュレーターゲームの醍醐味は「俺、できてる感」にあり


というわけで、おすすめの3作をご紹介しました。


筆者が思うシミュレーターゲームの醍醐味のひとつは、知識がなくてもなんとなく遊べて、それでいて専門的なスキルがついたように感じられるという、ざっくり言うところの「俺、できてる感」です。そしてこれは、なかなかほかのジャンルでは味わえない、シミュレーターゲームならではの楽しさなのです。


今回ご紹介したもの以外にも、Steamにはたくさんの「俺、できてる感」が味わえるシミュレーターゲームがありますので、気になった方はぜひ、Steamの検索窓に「Simulator」と打ち込んで、未知なる世界へと飛び込んでみてください!

タイトル情報

  • 「PC Building Simulator」(Claudiu Kiss, The Irregular Corporation)
  • 2019年1月30日発売
  • 価格:2,050円(2020年3月10日現在)
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  • 「陶芸マスター」(AZGames)
  • 2019年11月11日発売
  • 価格:410円(2020年3月10日現在)
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  • 「Chinese Brush Simulator」(Complex Plane)
  • 2020年1月24日発売(早期アクセス)
  • 価格:100円(2020年3月10日現在)
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  • 筆者:百壁ネロ
  • ゲーム買いすぎちゃう系ライター。小説家でもあります。著作は「ごあけん アンレイテッド・エディション」(講談社)、「母の嘘」(竹書房「悪意怪談」所収)。
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