ハサウェイ役・小野賢章ら次世代のキャストに、アムロ&シャアがエール! 「FAN GATHERING『閃光のハサウェイ』Heirs to GUNDAM」レポート!
「ガンダム」シリーズ最新作の映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の最新情報が、2020年3月24日(火)、イベント「FAN GATHERING『閃光のハサウェイ』Heirs to GUNDAM」にて発表された。
映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は、映画『機動戦士ガンダム逆襲のシャア』のその後を描く作品で、1989年から1990年にかけて全3巻で発表された、「機動戦士ガンダム」生みの親である富野由悠季さん執筆の小説(累計発行部数130万部以上)を原作とするアニメ。今回の映画版は、全三部作になることがすでに発表されており、第1部は2020年7月23日(木・祝)公開を予定している。
本作のストーリーは「機動戦士ガンダム」をはじめ歴代作品に登場したキーパーソンであるブライト・ノアの息子ハサウェイ・ノアを主人公として、反地球連邦組織「マフティー」の動向を追うというもの。
発表されているスタッフには、「ガンダム」シリーズを手がけたベテランスタッフも数多く名を連ねており、期待がいやがうえにも増すばかりだが、今回のイベントではついにハサウェイをはじめとするメインキャストや主題歌アーティストが発表。さらに「機動戦士ガンダム」シリーズのレジェンド的存在であるアムロ・レイ役の古谷徹さん、シャア・アズナブル役の池田秀一さんも駆け付け、次世代の「ガンダム」を担うキャスト、アーティストにエールを送った。
今回は、そのイベントの模様をお届けしよう。
なお、本来は観客を入れてのイベント開催の予定だったが、昨今の新型コロナウイルス感染拡大に対する配慮から今回は無観客での開催となった。イベントの模様は各動画配信サイトで公開されているので、ぜひそちらでもステージの様子を確かめていただきたい。
「逆襲のシャア」の魅力を改めて深堀りするトーク
「機動戦士ガンダム」から「機動戦士ガンダムNT」までの歴史を一挙に駆け抜けるオープニング映像に続いで、古谷徹さん、池田秀一さん、アニメ評論家の藤津亮太さん、小形尚弘プロデューサーが登場。
まずはこの4名によって、「閃光のハサウェイ」に直接つながる作品である「逆襲のシャア」深堀りトークが行われた。
当時を振り返って古谷さんは、「やっぱり『Zガンダム』から僕らがメインではなくなったのが、10年近く経って、2人が完全メインでがっぷり四つで戦えるのはうれしかった」とコメント。いっぽうの池田さんは「サブタイトルが『逆襲のシャア』ですからね。やっと我が世の春が来たかなという感じで」と心境を語った。
また公開当時は中学生だったとう小形さんが、「中学生の僕には全然わからなくて、ララァがお母さんって何を言ってるのかな?と思った」と語ると、藤津さんは「当時、大人の男の人に見てほしいと富野監督は語っていました。大人になってから見た方が、アムロとシャアの気持ちがわかるのではないかという作品」と解説を加えた。
「『逆襲のシャア』は、アムロがプロフェッショナルなパイロットとしてていねいに描かれている。逆にシャアは大人の男の哀愁が描かれて立体的になっていた。それを演じるのは難しかったですか?」という藤津さんの質問に対して、古谷さんは「僕はすんなり入れました。(アムロの恋人の)チェーンがもう僕のどストライクで、気持ちよくやれました」と答えると、「(古谷さんは)スタジオでも楽し気でした」と補足して笑いを誘った池田さん。ご本人としては、「ナナイとクェスの間で、彼も大変だったと思いますよ」とシャアの苦労をしみじみ語った。
これに同意したのが小形さん。「当時はアムロがかっこよかったけど、今はシャアの気持ちがよくわかる。いろんなものを背負う立場になったら、ナナイみたいな存在がほしいと思うのが面白い」とシャアへの共感をあらわにした。
小形「あの当時はアムロがかっこよかったなと。νガンダムがかっこよくて乗りたいなと思っていた。でも今はシャアの気持ちがよくわかる。いろんなものを背負う立場になったら、ナナイみたいな存在がほしいなと思うのが面白い」
面白かったったのが、「富野台詞」という富野由悠季監督独特の言い回しについてキャストはどう感じているのか、という話題だ。
池田さんは「富野さんのセリフって、日本語として正しいのかってのがありますよね」とツッコミを入れつつ、「でもいいんですよね、しゃべってみると。不思議ですよね。もしかしてミスプリントじゃないかと思って、台本を直したりすると怒られますからね」とアフレコ裏話を披露。
また、いまやガンダムの代名詞ともいえる「アムロ、いきまーす!」という出撃時の名乗りについても、「おかしいですよね」と池田さん。それに対し古谷さんは「これから戦場に出るんだから、大きい声を出しながら行かないと怖いんです」とアムロの気持ちを解説。ガンダムシリーズの原点を知るキャストが語るエピソードは、非常に新鮮で興味深いものばかりであった。
そんな映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』という作品は、アニメ業界内の評判も非常にいい作品としても知られている。特に有名なのが、押井守さんや庵野秀明さんといった著名なクリエイターたちが、後に『逆襲のシャア』について語る同人誌を作ったというエピソードである。このように多大な影響を後進に与えた本作の公開から1年後に発売されたのが、小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』だ。
ここで、当時「月刊ニュータイプ」の副編集長にして、『閃光のハサウェイ』の担当編集だった株式会社KADOKAWA代表取締役副社長・井上伸一郎さんのインタビュー映像が。
当時の井上さんは、好きな子が殺されて自らも人を殺した13歳のハサウェイは、『逆襲のシャア』の後、どう生きていくのだろうという興味を抱いて、富野監督にアフターストーリーの企画を持ち込んだという。
富野監督も、「そういう注文がくるだろう」と予測をしていたようなリアクションだったそうで、すんなりと企画はスタート。刊行後の反響はとても大きく、当時からアニメ化してほしいとう声があったことを井上さんは明かした。
また、「小説家としての富野監督の魅力」について尋ねられた井上さんは、「洞察力と社会を見渡す力」「本能で書いているようだけど、意外と理詰めで書いているところ」とコメントするなど、ほかではなかなか語られないエピソードを語ったうえで、今回の映画版はひとりの観客として観てみたいと期待をあらわにした。
インタビューを担当した藤津さんは、『閃光のハサウェイ』について「1989年は東西冷戦が終わり、内戦とテロリズムの時代に移りかわりつつあった。『閃光のハサウェイ』は、いち早く主人公の立ち位置を反連邦組織のリーダーという、普通のロボットアニメならやらない設定を取り入れた。テロリズムで世の中を変えようとする主人公というのが、時代を先取りしていた」と評価した。
小野賢章ら「閃光のハサウェイ」キャストが初お披露目!
『逆襲のシャア』深堀りトークの次は、いよいよ映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』特報映像第2弾の初お披露目だ。と、その前に『逆襲のシャア』のラストシーンを古谷さんと池田さんが生アフレコで再現! その場で演じているとは思えないほどに、熱く感情のこもった演技には息をのむばかり。
続いて映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』特報映像が。ここで、ついにキャストが発表。
ハサウェイ・ノア役を小野賢章さん、ギギ・アンダルシア役を上田麗奈さん、ケネス・スレッグ役を諏訪部順一さんが演じることが発表され、3人がステージに登場した。
まず役が決まった時の感想を聞かれると、「最初は信じられなかった。プレッシャーを感じつつも、やるしかないので、今は一生懸命にやっています」(小野)、「嬉しかった半面、プレッシャーが大きすぎて、逃げたいっていう思いが強かったんですが、今の自分だからできることを一生懸命やっていきたい」(上田)とかしこまりつつコメントするふたりに対し、諏訪部さんは「やったー!って感じで嬉しかったです。正直(役を)狙ってました。宇宙世紀で生きられると思うと感無量」とテンション高めにコメントした。
ここで先輩ガンダム声優としてのアドバイスを求められた古谷さんと池田さん。
古谷さんは「『ガンダム』の主人公をやると人生が変わる。(ゲームなどのメディア展開が多いので)これで食いっぱぐれることはない」と冗談交じりに語りつつ、「自分がニュータイプであることを信じて、感性に任せて思い切り演じればいい」とアムロらしいエールを送ると、池田さんは上田さんに「いい女になるのだ」とシャアがセイラさんに送った名台詞を送る。これを受けて上田さんは「いい女になります!」と、『閃光のハサウェイ』のファム・ファタール(運命の女)であるギギを演じる意気込みを語った。
ここで一度古谷さんと池田さんは退場。入れ替わって再びステージに登場した藤津さんを交えて、今度は映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』を深堀りするトークが繰り広げられた。
「なぜ今ハサウェイをやるのか?」と聞かれた小形さんは、「(原作の小説は)当時の社会情勢を取り込んでいたのかもしれないけど、現代は預言書のように富野さんが危惧していた世界に近づきつつある。そんな今だからこそ見てもらった方がいいのではないか」と思ったことと、富野監督の小説家としての評価を高めたいという思いから今回の企画をスタートしたと語る。
また、今回は初めて富野監督の原作を別のスタッフが映像化する作品となる。この座組については、「30年前に(アニメ版『閃光のハサウェイ』を)やったとしたら、やはり富野さんに監督してもらいたいし、音楽は三枝成彰さん、作画は北爪宏幸さんだと思う。ただ、今『ハサウェイ』を映像化するにあたり、今まで好きだった人に喜んでもらえるものにはするけれど、10年、20年と次の世代の人もきちんと見れるフィルムにしないといけないと思った」と事情を説明。
また、監督に『機動戦士ガンダムUC』で作画監督も経験している村瀬修功さんを指名したのは、映像表現に秀でており、彼の映像感覚で『ハサウェイ』を作ってもらいたいとおもったこと。また実写に近い演出アプローチということもあり、作画面でも実写寄りのリアルな表現をデザインを意識。さらにキャストも、キャラと年齢の近い、等身大の生っぽい演技をしてもらいたいということで、今回の人選に至ったことなどが語られた。
もちろん小説版の挿絵を担当した美樹本晴彦さんや、メカデザインの森木靖泰。『逆襲のシャア』でハサウェイ・ノア役を演じた佐々木望さんら旧来の関係者にも、「こういう方向性で行きたい」と説明をしたうええの人選だという。
原作者の富野監督は、今回のアニメ版『閃光のハサウェイ』制作にあたり、どのような反応だったのか気になるところだが、「やらせてくださいと言ったら、すんなり『いいよ』と言われました」と小形さん。さらに村瀬さんが監督を務めるということで、翌日には「アニメーターとして評価はしているけれども、アニメーター出身の演出家の人は、これをやっちゃいけないよ」という注意書きをまとめたメモと、男女の三角関係のドラマの参考資料として韓国ドラマの映像作品を用意してくれたそうだ。
このように、かなり好意的にバックアップしてくれたそうだが、『機動戦士ガンダムNT』上映時に公開された予告映像第1弾を見た時は、かなり怒っていたそうだ。
小形さん曰く「『NT』は派手な作品だったのでテンションの低い予告編を作ったら、『お前は予告の意味をわかってない!』と叱咤された」という。
各キャストが受けたキャラクターの印象は?
さて、そんな風に企画がスタートした映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』だが、各キャストは自分の演じるキャラを初めて見た時はどんな印象を受けたのだろうか。
小野「『逆シャア』から12年経って立派な青年になってて、しっかり大人だなというのが最初の印象。抱えている過去が大きいので、そこを常に出すのは違うとは思っているんですが、それが見え隠れするようなちょっとした瞬間を、僕のニュータイプの感性で深堀りできれば」
諏訪部「ビジュアルをみて、これは狙えるかもしれない!と思った。自分の中ではしっくりくる感じでオーディションができたので、演じることができてよかったなと思います。パッと見、優男できざな雰囲気があるけど、軍人としてピシッとした部分とちょうどいい大人感を出せれば」
上田「初めて見た時は、大人っぽくて美しい人だなと思ったけど、だんだんと大人っぽいんだけどちょっと少女っぽいところのあるという印象に代わってきました。さらにオーディションの間にだんだん行方が分からなくなってきた。今は女性らしさとか少女らしさ。そして不安定なところや危うさ、隙が見え隠れしているところが魅力だと思います」
と各キャストが印象や、キャラクターの魅力、意気込みを語ると、小形さんは各キャストを決めたポイントを語る。
ハサウェイについては「小説で書かれた時は、団塊ジュニア的な要素の入ったキャラクターおして描かれていたけど、2020年に映像化するにあたって今の25歳に近い考えて演じてほしいということで、それに近しい年齢の。そしてアクシズショックでの経験を抱えて大人になったわけで、そういう意味で影の部分を演じられる方ということで選ばせていただいた」。
ケネスについては「諏訪部さんの声の芯の強さがポイント。優男の部分と軍人としての怖さを感じる部分があってほしいと思って選びました」
ギギについては「この作品はギギで動いている。大人であり少女であり、もろさもあるキャラ。そうそうたる顔ぶれにオーディションを受けてもらった中で、上田さんだけ違うアプローチだった。可憐な少女なんだけど怖さやミステリアスな部分があった」
とそれぞれのオーディションでの決め手が語られると、「そんな風に思われていたんだ!」と各キャストも驚きを隠せない様子だった。
なお、アフレコはまだ序盤までしか行われておらず、これから中盤以降の収録があるとのことだ。
そのほか、『ガンダム』ということで肝心のモビルスーツの表現がどうなるのか気になるところだが、『閃光のハサウェイ』のモビルスーツはとにかく線が多い。ということで、普通のアニメならまずOKが出ないところ、今回は3DCGでの描写を多めにすることで、この問題をクリアしているという。
これは「80年代ならできなかったこと」の一つである。
また主役モビルスーツ「クスィーガンダム」のデザインが気になるところだが、これはまだ公開できないとのこと。
そして『ガンダムUC』に先行して登場した本作の量産型モビルスーツ「グスタフ・カール」だが、『UC』では原作小説に比べて、かなりマッシブな体形にアレンジされていた。実は小形さんも「これは僕のグスタフじゃない」と思いつつ『UC』を作っていたそうだが、果たして今回はどんなデザインになるのだろうか……?
今回の映画はアニメの続編のか、「ベルチル」の続編なのか?
そのほか、制作上の新たな取り組みとして、村瀬監督自らがVコンテ(絵コンテを動かして、アクションのタイミングやカメラの動きなどをより直感的に共有できるようにしたもの)を作成。村瀬監督によると、「007」シリーズのような実写映画のスピード感を本作では意識しているとのこと。
また、第1部の舞台がフィリピンのダバオということで、実際に現地でロケハンを行ったという。当時、実は富野監督は旅行ガイドを参考にして舞台を想像しつつ、執筆していたそうで、実はかなり実際の場所と劇中の場所が食い違っていたことが判明したという。今回の映像化にあたり、よりリアルなダバオの街が描写されることにないそうだ。
そして、おそらくもっとも多くのガンダムファンが気になるところだろう、本作は映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の続編なのか。それとも小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』の続編なのかという点だ。
ご存じない方のために説明すると、小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』は映画として完成した『逆襲のシャア』の没パターンのシナリオをもとにした小説で、小説『閃光のハサウェイ』は、そちらのストーリーの後日談となるのである。
この藤津さんからの質問については、「どっちとは今の時点ではいいづらい。サンライズの映像作品としては『逆襲のシャア』の続きというのは間違いない。小説版の「ベルトーチカ」も読んでいるので、その要素が入らないこともない。それは実際に見ていただいたらわかるはず」と小形さんは返答。ちなみにまだ映画第3部のシナリオがあがっていないので、結末もどうなるのか、本当にわからないとのこと。原作小説通りの衝撃のラストを迎えるのか、それとも……気になるところだ。
[ALEXANDROS]が主題歌を担当!
話題は音楽へと移る。今回の劇伴は、『UC』『NT』でも登板した澤野弘之さんが担当。ビデオメッセージでの出演となった。
今回は「大人のガンダムを意識したアプロ―チ」をしているとのこと。
さらに主題歌アーティストとして、ロックバンド・[ALEXANDROS]のメンバーが登場。
去年のガンプラの売り上げは、日本よりも海外の方が高いということもあり、映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は海外での上映も予定されているという。そういう経緯もあって、一緒に海外に行ける日本のアーティストとして[ALEXANDROS]に白羽の矢が立ったそうだ。
メンバーも今回のタイアップに喜びが隠せない様子だが、もっとも喜んでいるのが彼らのマネージャーだそうだ。マネージャーはもともと「ガンダム」の大ファンであり、所属レーベルの「RX-RECORDS」という名前も、ガンダムの形式番号「RX-78」にちなんだもの。さらにCDの商品番号として「RX-78」もずっと空けていたということで、「自分たちも光栄なんですが、マネージャーが一番テンション上がってます」とボーカルの川上洋平さんは語った。
そして楽曲自体は、現在鋭意制作中とのこと。
「小説とかを読みながら、いろんな感情が自分の中に芽生えてきています。激しさや虚無感、それを曲に落とし込むにはどうしたらいいか。なんとなく絞り込めてきた」(川上)そうで、完成が非常に楽しみだ。
イベントの最後に、古谷さんは「アムロとシャアが紡いできた宇宙世紀のガンダムの正統作品です。新しいファンを獲得して『閃光のハサウェイ』が盛り上がれば、新たなアムロとシャアの物語が紡がれるかもしれません」と今後の『ガンダム』シリーズの展開についてコメントを残したが、いずれにせよ新たな宇宙世紀の幕開けを告げる作品がどのようなものになるのか、期待が高まるばかり。
主演の小野さんも、「(古谷さんと池田さんの)2人の演技を間近で見て、またひとつギアを上げることができた」と意欲を新たにした様子。7月の公開を心して待ちたい!
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