【インタビュー】早見沙織と5人のクリエーターの“文化交流”。ミニアルバム「シスターシティーズ」が完成!

常に高品質な音楽をファンに届けてくれる早見沙織。名だたるサウンドクリエーターが楽曲を提供し、彼女が歌詞をつけて歌うという、期待しかないミニアルバム「シスターシティーズ」が、ついに完成した。
楽曲提供したのは、ジャズを中心に活躍するKenichiro Nishihara(西原健一郎)、ボーカル曲から劇伴まで多彩に手がける横山克、アニメ「覆面系ノイズ」などで早見との交流があるロックアーティスト、NARASAKI、早見が大ファンだという元キリンジの堀込泰行、そして、UNISON SQUARE GARDENの田淵智也という豪華な面々。各曲の制作について、じっくりと語ってもらった!

カラフルでありつつ、まとまりのある1枚になりました


──昨年末に配信シングル「Statice」についてインタビューさせていただいたとき、語ってくださったミニアルバム「シスターシティーズ」が、いよいよ完成しました。「シスターシティーズ」は「姉妹都市」という意味で、早見さんが外に出かけて、5人のサウンドクリエーターと文化交流するようなミニアルバム、というお話を前回うかがっていたので、アルバムを通してのテーマが「“旅”と“自由”」になったというのは納得でした。

早見 今回、横山克さんと直接打ち合わせをさせていただいた際、なんとなくこのキーワードが出てきて、アルバムの方向性が決まったように感じました。それぞれにご自分の世界を持った方々に楽曲をお願いして、カラフルなサウンド感になりましたが、最終的にはまとまりのある1枚になったかなと思います。

──1曲目は先行配信もされた「yoso」。Kenichiro Nishihara(西原健一郎)さんの作品です。前にうかがったように、早見さんの個人的な楽曲リストの中に、西原さんの曲が入っていたと。

早見 はい。私の2019年上半期の楽曲リストを見たディレクターが、「西原さんに参加していただけるよう、お願いしてみませんか?」と提案してくれたのがきっかけでした。お引き受けしてくださって、本当に光栄です。

──でき上がった楽曲はいかがでしたか?

早見 もちろん、素晴らしかったです。自分のための曲を作るようなお気持ちで制作してくださったということで、西原さんのエッセンスがぎゅっと詰まった曲になっていました。

──作詞はいかがでしたか?

早見 夜、車で移動しながらとか、朝、起き抜けに自分の部屋でとか、いろいろなシチュエーションでデモ音源を何度も何度も聴いて、曲のイメージをつかんでいくところから始めました。第一印象は、おしゃれでノリのいい曲という感じだったんですけど、何度も聴いていると、ちょっと切ない感じ、物憂げな感じもあることがわかってきて、歌詞ではその両面を表現できたらいいなと思って、書いていきました。

──歌詞にも「不慣れなcity」という言葉出てきますが、タイトルの「yoso」は、漢字にしたら「余所」ということですよね。

早見 はい、旅先の見知らぬ街のイメージです。慣れない土地というものは楽しさもあるけど、どうしようもなく不安になるときもあって。

──旅先での気持ちの両面が、楽曲の雰囲気につながっているんですね。グルーヴ感のあるジャジーな曲なので、歌詞も韻を踏んでいたりして、ノリのよさを生んでいると思いました。

早見 はい、韻はちょっとだけ意識しました。リズムがいい楽曲なので、そういう歌詞のほうが歌っていて私も楽しいだろうなと思って。実際、レコーディングはとてもノリよくできました。

──ボーカルは低めで、大人っぽい声でした。

早見 いつもよりキーが少し低いんです。ボーカルのテンションも、気だるい感じが出ていたほうがいいのかなと思って、そういう歌い方になりました。


──2曲目の「mist」は横山克さんの作曲・編曲です。この曲はいかがでしたか?

早見 横山さんと打ち合わせしていたときに、私から抽象的なイメージをお話しさせていただいたんです。「火」よりは「水」、「太陽」よりは「月」、「赤」よりは「青」という感じなんですとお話ししたら、横山さんもうなずかれていて。そんなふうにして2人の間に最初からあった共通認識を、具体的な形にしていただいたのがこの曲だと思います。それを、次は私が言葉で形にしていくという作業でした。

──歌詞は、どのような出来になったと感じていますか?

早見 「“旅”と“自由”」は横山さんとお話ししているときに出てきたテーマなので、それを象徴するような歌詞になったと思います。旅のよさと自由の心地よさの両方が入った曲になりました。

──タイトルを直訳すると「霧」ですね。

早見 はい、どこまでも自由に行けそうなので(笑)。実際に旅に出なくても、いつもの日常の中でそういう気持ちになれたらいいなと思って。この曲を聴いてくださることで、みなさんの心が少しでも自由になれたら、うれしいです。

──アレンジにもタイトル通りミスト感があって、涼しげです。

早見 そうですね。しかも、横山さんが旅先で録ってきた音が入っているらしいです。そのおかげでリアルな実景がイメージできるサウンド感になりました。私はサウンドトラックとキャラクターソングの両方で横山さんの作品を知っているので、この曲の仕上がりを聴いたときは、横山さんの音だと思いました。


──3曲目の「ザラメ」はNARASAKIさんの作曲・編曲です。

早見 NARASAKIさんとは、これまでいろいろな楽曲でご一緒させていただいてますし、仲間で集まったりすることも多くて。その中で私がしゃべっているところとかを見て、早見沙織のイメージをふくらませて作ってくださったのがこの曲だとおっしゃっていました。

──とても穏やかなメロディですね。

早見 やさしい曲ですよね。私は逆に、この曲を聴いてNARASAKIさんらしいなと思って。穏やかな中に、明とも暗とも言いがたい何かがあるんですよね。すごく曖昧で絶妙な感覚が曲の奥底に潜んでいるというのは、今までも感じてきたことで、この曲をいただいたときも同じでした。

──NARASAKIさんをよく知る早見さんからすると、NARASAKIさんらしい曲だと。

早見 今回の曲はカントリーっぽいんですけど、NARASAKIさんはどんなジャンルの曲も作れる方なので、曲によっての印象は多岐にわたると思うんです。でも、どんなジャンルの曲を書かれても、NARASAKIさんならではのものを私は感じるんです。やさしいようなさびしいような、明るいような暗いような……。全部、私の勝手な感想なんですけど。

──感覚的な話で、面白いです。そんなNARASAKIさんの曲に、どういうイメージで歌詞を書いていったのでしょうか?

早見 NARASAKIさんから、楽曲を作るときにイメージしたことをお話いただいたんです。広い荒野に1本の道が通っていて、その先にこれから昇るのか沈むのか、地平線に近い太陽があってというイメージで、私もそれを思い浮かべながら歌詞を考えていきました。絵は雄大なんですけど、私は日常の中で、自分の歩みを振り返るような内容にしようと思いました。

──不思議な印象の歌詞です。「ザラメ道」という言葉が出てきますが、それはどんな道なんですか?

早見 これはNARASAKIさんから送っていただいたデモを聴いていて、自然に頭の中に浮かんだ言葉なんです。どんな道なんでしょう……、インスピレーションとしか言いようがないですね(笑)。

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