どうやって「マジンガーZ」を球体に収めるのか? バンダイ“カプセルレストイ”の終わりなき挑戦!【ホビー業界インサイド第57回】

「ザクヘッド」、「だんごむし」など、カプセルの球体をそのまま使った巨大なガシャポン「カプセルレストイ」をヒットさせてきたバンダイ ベンダー事業部が、全高約20 cmにもおよぶ「マジンガーZ」の胸像モデル“INTEGRATE MODEL MAZINGER Z”を5月下旬に発売するという。
驚かされるのは、その常識はずれな大きさである。こんな大きな胸像がカプセルの球体になるなんて、信じられない。一体どうやって作ったのだろう? バンダイ ベンダー事業部 企画・開発チームの誉田恒之さんにお話をうかがった。

なぜ“カプセルレストイ”は、ここまで広まったのか?


──ここ何年か、商業施設などでカプセルトイ売り場が増えているように感じます。その理由は、何でしょう?

誉田 私は18年ほどカプセルトイに関わってきましたが、今、カプセルトイ市場は転換期だと思います。かつては200円の商品が主流で、300円に価格が上がると、それだけで売り上げが落ちました。また、客層もカプセルトイを好きな方たちが多かったのです。しかし、今ではキャラクターやアニメなどに特に詳しくないライトユーザーも、カプセルトイ売り場に足を運び、面白そうな商品を見つけて回していってくれます。 また、新しく入ってきた客層は1回500円のカプセルトイでも、その価格に見合ったクオリティの物が入っていれば、どんどん回してくれます。そのおかげで、カプセルトイ市場が急激に拡大しているのが現状です。単に売れているキャラクターをカプセルに入れて売るのではなく、新しく入ってきた人たちをどんなインパクトで驚かせるかが、私たちの仕事で重要になってきました。

──そうした傾向の中から、カプセルそのものを使った大型商品が出てきたのですか?

誉田 はい、「カプセルレストイ」の最初の商品は「カプキャラ ドラえもん」(2015年)でした。カプセルトイは中国で生産しているのですが、工賃が上がったために商品のサイズが小さくなってしまい、彩色できる部分も減っていっている時期でした。そんな趨勢(すうせい)の中、どうにか目先を変えて驚きのある商品を出せないだろうか、と考えました。
カプセルトイは、緩衝材であるカプセルそのものに、それなりにコストがかかっています。買ったらすぐ捨てられてしまうカプセルにかかる費用は、かなりの無駄ではないかと気がつきました。だったら、カプセルも商品の一部にしてしまおうという考えから生まれたのが「カプキャラ ドラえもん」で、頭の中に入っている胴体を組み合わせると、9cmほどの大きさになります。それまでの200円のガシャポンではサイズは5 cm程度でしたから、サイズ的に十分にインパクトがあり、カプセルレストイがブームになりました。 2015年に発売した「カプキャラ ドラえもん」と「カプキャラ ヒロインドール」はお子様や女性に売れたので、男性向けのカプセスレストイとして「機動戦士ガンダム EXCEED MODEL ZAKU HEAD」を2017年に発売しました。このザクヘッドは、狙っていたハイターゲット層に非常に好評でした。 そして、究極のカプセルレストイとして、2018年に「だんごむし」を発売しました。だんごむしは260万個の大ヒットとなり、シリーズ化される中で、「まんまるこがね」「だいおうぐそくむし」をアソートしてみました。だんごむしを買おうと思ったら、別の丸くなる虫が出てくるわけです(笑)。ガシャポンのランダム性を逆手にとった面白さですね 。


──甲羅がそのままカプセルになっている亀(インドホシガメ、ギリシャリクガメなど4種類)も、だんごむしに続く生き物シリーズですよね。手足が、本物の亀そっくりに出てくるので驚きました。

誉田 はい、単に亀を模型にして、それだけでお客様の心に刺さるわけではありません。「欲しい」と思わせるにはどうしたらいいのか真剣に考えて、骨格や関節の動き方を勉強しました。「かめ」は2019年末の発売です。このようにして、お子様や女性の方、ハイターゲット層、さらには、これまでガシャポンを回したことのない一般層にもカプセルレストイが広く受け入れられてきました。そこで今年は、未開拓だったシニア層にアピールしたいと思っています。そのため、今までよりさらに大きく、驚きのあるカプセルレストイとして、「INTEGRATE MODEL MAZINGER Z」を開発しました。

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