全ては彼のイメージボードから始まった! WEBアニメ「愛姫 MEGOHIME」企画第2弾、貞本義行インタビュー&原画を特別公開!

福島県三春町と福島ガイナ・ガイナが手を組んだWEBアニメ「愛姫 MEGOHIME」。先日は福田己津央監督、株式会社ガイナ・福島ガイナの浅尾芳宣プロデューサー、古里尚丈アソシエイトプロデューサーにロングインタビューを行なった。
WEBアニメ「愛姫 MEGOHIME」浅尾芳宣(プロデューサー/株式会社ガイナ・福島ガイナ代表取締役)×福田己津央(監督)×古里尚丈(アソシエイトプロデューサー)インタビュー

そのインタビューを通して見えてきたのは、スタッフリストに監修としてクレジットされている貞本義行さんの、原案的立場のクリエイターとしてのプレゼンスの高さだった。これは貞本さんにもお話をうかがわなければいけないのでは? ということで、作業中の貞本さんに急遽時間をいただいてインタビューを行なうことができた。

今回は貞本さんのインタビューを、貴重な資料の数々とともに紹介していく。


──福田監督や浅尾プロデューサー、古里プロデューサーから、「愛姫 MEGOHIME」のクリエイティブの土台の、かなりの部分を貞本さんが手がけられていることをうかがいました。

貞本 もともとは、三春町のマスコットキャラクターを作りたいというお話だったんです。そのデザイン制作を受けたんですが、アシスタントの子(アラキマリさん)が時代物に強かったので一緒にやろうかと始めました。でもなかなかその制作が難航していたのでね、途中から僕も本格的に入って、アシスタントがやりたいこと、三春町の方がやりたいことをぜーんぶ聞くことから始めました。

グッズとかラッピングカーとかできないかなと話しながら1年ぐらいたった頃かな、それを元にアニメを作りたいというお話をいただいたんです。その時点では僕とアシスタントの子、三春町の担当者の方の3人だけのチームでしたから、これぐらいの期間、予算になるよという外枠から作りました。だから初期イメージでは誰かに5分ぐらいの楽曲を作ってもらって、それに合わせてPVを作るような感じだったんです。見る人のイメージを刺激できればいいかなと思っていたんですが……。

──しっかりしたショートアニメを作ることになった。

貞本 やはり地域振興の観点からすると、声優さんに声を当てていただいて、イベントなども行っていきたいということでお話のある作品を作ることになりました。しかし予算を考えればそれも大変だなということで、なんとかぎりぎりストーリーが伝えられる作品というところに落ち着いて、イメージボードを描いていきました。こういうストーリーを作ろうとなったけど、それをそのまま描くのはボリュームとして難しい。それでそういうストーリーなんだな、というイメージを伝えようとしました。ちょっと説明不足になるかもしれないけども。

──名シーンのエッセンスを集めたダイジェスト的な。

貞本 見る人のイメージを刺激する、印象的なものにしたいと思いました。あとはあくまで三春町の町おこしが目的なので、三春町のロケーションや、史実をちらほらと入れこんでいきました。ファンタジー要素もあるんだけど、歴史ものを好きな人をちょっと刺激したり、普通の人も楽しめるものを目指しました。ストーリーボードが完成したところで監督が福田さんに決まったので、こういう感じでお願いできますかと相談しました。なので第1話の「再会の滝桜」については制作済みのイメージボードに、福田監督にバトルシーンを足してもらった感じです。

──貞本さんが手がけたエンディングの映像がとても印象的でした。

貞本 あの止め絵もイメージボードを描いたんですが、内容を補足するためにあとから追加したものです。でもあれがないと全然ストーリーがわからないよね(笑)。

──ネネの愛に対する気持ちと流れがよく伝わってきました。

貞本 作っている側はストーリーも関係性も勝手にわかっているんだけど、見ている人には伝わらないからと足しました。それでようやく第1話が終わった終わったと思っていたら「続きを作ってくれ」と言われたんだけど、その続きは考えてなかった(笑)。でもこのあとを描くなら、この子たちの関係性がどうなっていくかを描くことになるかだと考えました。それと、三春町がやってほしいであろう町の名前の由来とか、ご当地要素をさらに入れていこうと。

──桜、梅、桃が春に一度に咲く「三春町」ですね。

貞本 そうですね、ロケーションを入れながらストーリーを組み立てていきました。第2話以降に関しては僕がこうなるはずだよ、こうなるはずだよとアシスタントの子に話してまとめてもらった感じですね。ショートアニメなので構成は自然と決まってくるものなので。

──戦う少女同士の関係性を濃密に描く路線は貞本さんの発案なんですか?

貞本 あれはアシスタントの子の希望だったんですよ。女の子同士の友情物語がやりたいということだったので、そういうストーリーにしました。

──第2話以降において、貞本さんのこだわりが入っている要素や、今後の展開について聞かせてください。

貞本 (こだわったのは)3つの春の使い方ですね。あとは愛姫そのものの解釈というか……(作中の)愛姫とは何者なのかという部分ですね。第1話では桜の中からふわーっと出てきた描写しかなくて、その時点では福田さんには「妖精さんでーす」としか話してなかったので(笑)。第3話では愛姫がIXAというゲームシステムにおいてどういう存在なのか、彼女の目的がなんなのか、という部分が明かされるんじゃないかなと思います。

戦う少女同士の百合的な関係性を描くストーリーはキャラクターデザインのアラキマリさん発の方向性だったという話は収穫だった。また、第3話は桃の花がモチーフになるのだろうか。多くの謎が明かされるであろう物語の続きを、今から楽しみにしたい。

(取材・文/中里キリ)

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