アニメライターが選ぶ、2020年冬アニメ総括レビュー! 「映像研には手を出すな!」「けだまのゴンじろー」など、5作品を紹介!!【アニメコラム】

2020年3月に完結したアニメの中から注目作を総括レビュー! サイエンスSARUが映像化した「映像研には手を出すな!」、1年にわたって放送された「けだまのゴンじろー」、懐かしのキャラを擬人化した「うちタマ?! ~うちのタマ知りませんか?~」、「good!アフタヌーン」連載のファンタジー「空挺ドラゴンズ」、オリジナルタイトル「ID:INVADED イド:インヴェイデッド」をピックアップしました。

映像研には手を出すな!

女子高生3人組がアニメ制作に挑む人気コミックをアニメ化。7話のアバンではアニメーター志望の水崎ツバメが、アニメーションに興味を持つ原体験のシーンが挿入された。足腰が弱ってしまった曾祖母に、ツバメは座った人が立つまでを描いたスケッチを見せる。すると曾祖母はスケッチからコツを掴み、誰の手も借りずに立ち上がるというエピソードだ。
この何ともない小話がなぜか心に残るのは、アニメーションは現実を変える力を持つことを端的に示しているからだろう。曾祖母の主観で描かれる一歩ずつ足を踏み出すカットは、ツバメがアニメに興味を持たなければ見ることができなかった景色なのだ。そういえばEDアニメは3人が歩く姿が描かれていたし、映像研のロゴムービーでは「映」の文字が歩いていたはずだ。ただ歩くという行為さえ輝いて見えるようになる一作。



けだまのゴンじろー

全身が毛玉でできた謎の生物・ゴンじろーが「ほっと毛ねぇー」を合言葉に、小学5年生の前神マコトとトラブルを解決するドバタバアニメ。お腹に付いたボタンをチェンジすれば、ボディビルダーやコックさんなど、さまざまな姿に変化できるゴンじろーと同様に、アニメーションの表現も多彩。マンガの世界に迷い込んで白黒になったり、毛でできたフェルトアニメになったりと、面白ければ何でもアリな世界観が視聴者を飽きさせない。
前半のクライマックスといえる15話では、中年男性の尻を平手打ちするという特訓を経たマコトが開眼。己の尻をリズミカルに叩きながらゴンじろーをパワーアップさせるという熱い展開が待ち受けている。もちろん王道のストーリーも魅力。世界中の人々が協力して地球の危機を救う46話の結末は、毛糸とボタンが繋げるという主題を持つことを気付かせる名エピソードだ。



うちタマ?! ~うちのタマ知りませんか?~

1983年に誕生した人気キャラクターの擬人化プロジェクトがアニメで登場。いつも迷子になってしまう主人公・タマは、トレードマークのブチが髪の毛のカラーリングで表現されており、懐かしのキャラクターたちが人間になった姿を楽しめる。
あくまで人間のように描かれているだけで、実際は動物のままなところがポイント。犬小屋の横であぐらをかいたり、車の下に寝転がっていたりする様子は動物であれば愛らしいが、人として描写されると途端にカオスな雰囲気が漂ってくる。そのビジュアルに合わせるかのように、ストーリーもふんどし姿で相撲を始めたり、ラップを披露したりとエスカレートしていく。キュートとカオスが一体になった一作。



空挺ドラゴンズ

龍を狩って旅をする捕龍船クィン・ザザ号のクルーたちを描いたファンタジーコミックが原作。太陽の光を浴びて美しく輝く龍や、飛行船から見える美しい景色に目を奪われるが、それ以上に注目なのは龍の肉を使った架空料理の数々である。
小さな龍を丸焼きにした悪魔風、カラギモをキャベツの葉で包んだテリーヌ、巨大な1枚肉をそのまま揚げた特大カツレツなどなど、いずれもヨダレが出そうなメニューばかり。コックを演じる井上和彦の解説には謎の説得力が備わっており、料理をより美味しく見せる調味料としての役割を担っている。手描きではなく3DCGで表現されていることも、ほかのグルメアニメとは一線を画しており、見ているとお腹が空いてくること請け合いだ。



ID:INVADED イド:インヴェイデッド

主人公・鳴瓢秋人が殺人犯の深層心理の世界・イドに入り込み、名探偵・酒井戸として事件を推理するSFミステリ。イドの光景は犯人によって異なるが、カエルちゃんと呼ばれる少女の死体が必ず存在し、その死の謎を解くことが現実での事件解決に繋がっていく。
深層心理の世界は虚構であるが、酒井戸は1つひとつのイドにきちんと落とし前を付けるところがポイント。死を何度も繰り返して正解にたどりつき、現実世界ではすでに死んでしまっている被害者を助ける姿が印象的だ。そんな酒井戸のやさしさを見ていると、現実と虚構の差など大したことはないと思えてくる。


(文・高橋克則)

(C) 2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会
(C) SIE・SME・ANX・小学館 (C) ゴンじろープロジェクト
(C) ソニー・クリエイティブプロダクツ/「うちタマ?!」製作委員会
(C) 桑原太矩・講談社/空挺ドラゴンズ製作委員会
(C) 2019「イド・インヴェイデッド」製作委員会

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