【インタビュー】デーモン閣下×宝野アリカ(ALI PROJECT)。この世のものとは思えない美声が響く「時空の迷い人」!

すでに各所で大きな反響を呼んでいる、TVアニメ「八男って、それはないでしょう!」のオープニングテーマ「時空の迷い人」。デーモン閣下と宝野アリカ(ALI PROJECT)という、強烈な存在同士のコラボレーションが実現したのだ。デーモン閣下の作曲による「時空の迷い人」は、本格的な北欧メタルに。また、共作による歌詞は、作品の世界観に寄り添いながら、迷える現代人に向けてのメッセージ性を感じさせるものになった。
両者とのインタヴューをお届けする!

重厚なコーラスが入る、シンフォニックな北欧メタルを目指した


──「悪魔と闇の女王の夢の共演」と、メーカーの資料に書かれていましたが、まさにその通りのコラボレーションですね。お二方は、それぞれのことをご存知だったのでしょうか?

宝野アリカ 私はもちろん存じ上げていました。それに、ウチのバンドのバイオリニストが「聖飢魔II」の大ファンで、今回のコラボレーションを喜んでいました。

デーモン閣下 吾輩は、7、8年前に関わっていたプロジェクトで、若い女性たちに歌を練習させる機会があったのだが、そのときにALI PROJECTの曲を使わせてもらい、集中的に聴いたのだ。今考えれば、もっと簡単な曲を歌わせたほうがよかったと思うのだが(笑)。

宝野アリカ それは女の子たちにかわいそうなことをしましたね(笑)。

デーモン閣下 そういう経緯があり、今回のコラボレーションの話が来たときは、すぐに「これは面白い!」と思った。ただ、楽曲制作の間は一度も顔を合わせることがなく、初めて対面できたのは、昨年秋の吾輩のコンサートツアーに招待したときだった。

宝野アリカ 「やっとお会いできましたね」と、ご挨拶できました。

──「時空の迷い人」の制作は、いつ頃から、どのようにして始まったのですか?

デーモン閣下 最初に話が来たのは一昨年の暮れだ。当初は、ALI PROJECTの片倉三起也氏が作曲する予定で、吾輩も「片倉氏の楽曲を歌うことができるのか」と喜んでいたのだが、吾輩が作曲を担当することになり、ちょっとがっかりしたものだった(笑)。

宝野アリカ ディレクターから、北欧メタルにしてほしいという依頼があったのですが、そのとき片倉さんはアルバム制作でスケジュールがいっぱいだったのと、またそのジャンルにも慣れてなくて、本格的にその路線を目指すのなら、専門家である閣下にお任せしたほうがいいということになりました。

デーモン閣下 吾輩も「重厚なコーラスから始まる、シンフォニックな北欧メタル」というリクエストを受けたので、まずはアニメの資料に目を通してメロディを書き、アレンジは本場の人間に任せようと思った。それで、吾輩の盟友であるスウェーデン人のクリエーター、アンダース・リドホルム(グランド・イリュージョン)に依頼をしたのだ。

──アンダースさんは、どういう方なのでしょうか?

デーモン閣下 吾輩が「GIRLS’ROCK」シリーズという女性アーティストのカヴァーアルバムを、ベスト盤含めて4作品リリースしたときにアレンジをやってもらったのが、アンダースとの出会いだ。魔暦19年(2017年)にリリースしたソロアルバム「EXISTENCE」も、アンダースのサウンドプロデュースだ。日本にも何度も来ているが、今回はスウェーデンにいながらにして、サウンドプロデュースを引き受けてくれた。

──「時空の迷い人」は日本で作曲され、スウェーデンでアレンジされた曲なんですね。

デーモン閣下 さらに、リードギターはボスニア人のギタリストが弾いたので、ボスニアでの録音だ。

──世界を駆け巡っての制作となったんですね。アリカ様は、閣下の作った楽曲について、どのような印象を持たれましたか?

宝野アリカ 私が最初に聴いたのはメタルのアレンジが加えられる前で、すごくキャッチーな曲だと思いました。

デーモン閣下 長年ロックバンドの姿を基盤とした音楽活動をおこなっているが、吾輩はヴォーカリストなので、ギタリストが作るようなメロディにはならない。また、世を忍ぶ仮の幼少時代にアニメの曲をたくさん聴いていたので、アニメの主題歌を作るとなると、あの時代の雰囲気を思い出してしまうのだ。アンダースが本格的な北欧メタルに仕上げてくれるだろうという確信があったので、吾輩も思うままに作ることができた。

──作詞はお二方の共作です。どのように作業を進めていったのですか?

デーモン閣下 メロディができた時点でアリカ女史と相談して歌割りを決め、自分が歌う部分は自分で歌詞を書くということにした。

宝野アリカ 一緒に歌うところは応相談ということで。

デーモン閣下 今回の制作の中でもっとも面白かったのが、歌詞の共作だ。「時空の迷い人」は吾輩が作曲したので、まず吾輩が先に歌詞を書いてEメールでアリカ女史に送り、アリカ女史がその先を書いていくという、先攻後攻のやり方を取った。お互いに、「おお、そうきたか。じゃあ、次はこうしよう」とインスパイアされながら作っていくことができた。

宝野アリカ 最初に閣下が、おおまかな役割分担を決めて、歌詞の道筋を作ってくださったのがよかったです。

デーモン閣下 男性である主人公の感情を表現する部分を吾輩が引き受け、彼が置かれた状況や物語におけるメッセージを表現する部分はアリカ女史にお願いした。

宝野アリカ そのうえで、私が普段使わないような言葉が閣下から返ってくると、自分の中で、その言葉の見え方、意味のとらえ方が変わって、新鮮に感じました。

デーモン閣下 制作に入る前は、お互いの個性がぶつかり合ってしまうのではないかという懸念が頭をよぎったこともあったが、まったく杞憂だった。面白さばかりであった。

宝野アリカ 私も、「今日は、閣下からの返事が来ているかな?」とEメールの返信を楽しみに待つ日々でした。

──まるで、ラヴレターのやり取りみたいですね(笑)。

デーモン閣下 平安貴族の和歌のやり取りのような、雅(みやび)やかな雰囲気があったな。

宝野アリカ そうですね(笑)。

おすすめ記事