【インタビュー!】6月2日、ネトフリ配信先行スタート! 夏アニメ「GREAT PRETENDER」は、映画の尺を意識して物語を構築した──鏑木ひろ監督&古沢良太(脚本・シリーズ構成)

2020年7月8日よりフジテレビ「+Ultra」、ほか各局にて放送開始、6月2日よりNetflixにて順次独占先行配信されるTVアニメ「GREAT PRETENDER」。

監督は「91Days」「鬼灯の冷徹」の鏑木ひろさん、キャラクターデザインは「新世紀エヴァンゲリオン」「ふしぎの海のナディア」の貞本義行さん。脚本・シリーズ構成にはドラマ「コンフィデンスマンJP」「デート~恋とはどんなものかしら~」を担当し、第29回日本アカデミー賞最優秀脚本賞(映画「ALWAYS 三丁目の夕日」)などの受賞歴もある古沢良太さんを迎え、制作は「進撃の巨人」「甲鉄城のカバネリ」のWIT STUDIOと、聞くだけで胸躍る布陣となっている。

鏑木ひろ×貞本義行×古沢良太×WIT STUDIOが生み出すのは、信用詐欺師(コンフィデンスマン)たちが繰りなす最高の痛快クライム・エンタテインメントだ。自称・日本一の天才詐欺師である枝村真人(通称:エダマメ)が、世界を舞台にしかける桁違いの騙しあい“コンゲーム”に巻き込まれていく……。その放送を控え、今回は鏑木ひろ監督と古沢良太さんのインタビューをお届けする。

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脚本のよさを生かし、映画のボリュームで物語を展開

――インタビューするにあたり前半の話数を見させていただいたのですが、本当に引き込まれる内容でした。信用詐欺師(コンフィデンスマン)といえば、古沢さんがドラマ「コンフィデンスマンJP」でも扱った題材ですが、本作はどのような経緯で生まれたのでしょうか?

古沢 誘われたのはもう何年も前なんです。プロデューサーの和田丈嗣さん(WIT STUDIO)からオリジナルアニメを作りたいという相談をまず僕が受けまして。2人の間で「老若男女みんなが楽しめるエンターテインメントを作りたい」との共通認識があり、僕はもともと詐欺師を主人公とした物語に興味を持っていましたので、こういう作品はどうかと提案したんです。

――公式サイトでは貞本さんも「古沢さんの脚本は完成度が高い」と書かれていましたが、鏑木監督は脚本を読んだ時の印象はいかがでしたか?

鏑木 すごくちゃんとしているって印象でしたね(笑)。読んでいて納得させられるというか、予定調和ではいかない部分が結構あるというか。もちろん、お約束な部分はあるんですけど、その文法ではない球を投げてくる感じがして、とにかく構成がすごくうまいと思いました。直し方も、構成から考えてガラッと直してくれたりして、相当腕があるなと。

――本作は1話完結ではなく数話でひとつの章「CASE」として展開していきます。脚本を書く際に、物語の構成はどのように考えたのでしょうか?

古沢 その回の中で伏線を張って、回収して、オチをつけるのが一番見やすいんでしょうけど、30分以内のお話でそれを量産していくのが難しくて。なので、(ひとつの章を)映画の尺と考えて、映画のボリュームの物語を4つ作るイメージで書きました。

鏑木 通常だと(CM、OP&EDを除いた)20分に起承転結をいれるのが、アニメの作り方だと思うんです。映画の尺で考えてそれを4分割とか5分割すると、真ん中の話数が持つのかなって思うじゃないですか(笑)。なので、単なる繋ぎの話数に見えないようには気を配りました。そこはキャラクターのパワーを使ったり演出で盛り上げたりもしつつ、全部通せば納得できるように、元の脚本のよさを生かす形でなんとかしました。

――古沢さんはもともと漫画家志望だったとのことで、いつかオリジナルアニメを手がけたいという思いもあったのでは?

古沢 そうですね。いつかはやりたいと思っていました。新人のつもりでいろいろ教えてもらい、すごく新鮮な気持ちで仕事ができましたね。

――キャラクターに関しても、アニメならではのことがあったと思います。本作でのキャラクターはどのように作られたのでしょうか?

古沢 エダマメ(枝村真人)は日本人ですけど、そのほかが外国人のキャラクターなのはアニメならではで楽しかったですね。国民性をひとりひとりのキャラクターに託すこともできますし。それぞれが背負っている背景に割と深く切り込んでいく構成になっているので、人間ドラマとしても楽しめるように作りました。

――そうやって書かれたキャラクターを、監督はどのように描いていったのでしょうか? ご自身のほうで変えていった点などあれば教えてください。

鏑木 原作があれば原作から派生させてふくらませやすいんですけど、この作品は古沢さんがゼロベースで書いたものなので、それにプラスαでなにを乗せればより人間らしく見せられるのか。単に話に沿った行動をしているだけではダメで、話をしている最中の芝居やリアクションの絵を考えていかないといけないんです。そのうえで最終話までに何かしらの成長がないと、存在する意味があまりないと思うんですね。だから、エダマメは最初こうだったけど、こういうキャラクターになりましたというゴールに徐々に変えていくことも意識しました。通して見ればみんながどこか成長していると思うんですけど、それをわかりやすく解釈、翻訳している感じです。

――実際に演出やダイナミックな動きもすごく印象的でした。監督的に特に見てほしい演出やキャラクターの動きなどはありますか?

鏑木 個人的に好きなのは、アビーが中指を立てるところなんですよ(笑)。最初にやっちゃったので、これはずっとやるだろうと思ってその後も入れています。アメリカで放映する時はどうなるんだろう、って思っていますけどね。

――それって、脚本の時点から中指を立てていたのですか?

古沢 いや、(立たせて)いないです(笑)。

鏑木 アビーだったらやりそうだなと思ったので(笑)。そういう下品なやつは足した部分なので、古沢さんがそういうことを考えている人ではないと言っておきます(笑)。

――ちなみに、古沢さんはキャラクターを作る時にご自身でイラストを描かれるそうですが、本作でも同じように描かれたのですか?

古沢 描きましたが、それは本当に初期の頃ですね。絵も何もない段階で、想像しながら落書きしていました。

――自分が想像したのともちろん違いはあるでしょうけど、キャラクターがアニメになって動いているのを見た時はいかがでしたか?

古沢 やっぱり貞本さんの絵だし感動しましたね。表情の豊かさとかも生きているなって感じがして。

――貞本さんが描かれたアニメは、ご覧になっていたわけですよね。

古沢 そうですね。「新世紀エヴァンゲリオン」はもちろん、世代的に「ふしぎの海のナディア」も見ていましたね。だから、最初は緊張しました。「そんなに有名な人じゃなくていいんじゃないか」って(笑)。

鏑木 「Anime Expo」とかに行くと、やっぱり貞本さんはめちゃくちゃ人気ありますからね。泣いている人もいましたよ。



アニメは“作り手の意図の塊”だと実感

――背景もかなり独特なタッチなのが印象的でした。ポップで絵画チックにデフォルメされているといいますか。背景に関してはどのような意図で?

鏑木 題材的に普通ならスーパーリアル系の作品かなと思うんです。ただ、それだと埋没すると思ったので、ちょっと違う感じでいけないかと考えました。版画も考えたんですが、結構普通だねとなって、syo5くんという若い人にそれを元に好きにイメージボードを描いてもらったんですよ。そのイメージボードをBambooの竹田さん(美術監督の竹田悠介さん)に見せたら「面白いですね」と。syo5くんのイメージボードを竹田さんが噛み砕いた結果が、今のものになります。

――この背景でも、キャラクターがしっかり映えていたのはすごいなと。

鏑木 通常だと食い合いになるんですけど、色彩設計の小針(裕子)さんが相当苦労してバランスを考えてくれて。プロの仕事をしてくれました。

古沢 「こういう背景にしようと思うんです」と見せられた時、すごくカッコいいなと思いましたね。オシャレだし新しい感じになるなと。

――本作にかかわらず、脚本を書いている時のイメージと実際の映像が違うことはあると思うのですが、そのような時は何か言ったりするのですか?

古沢 実写って制約だらけなので、イメージ通りにはならないんです。むしろ現場で起きたハプニングを楽しむってやり方もありますから。それが気に入らないからといって何か言うことはしないですね。

――逆にアニメは制約が少ないといいますか、実写ならCGを使わなければ出来ないこともできるわけじゃないですか。アニメをやってみて感じたことがあればお聞かせください。

古沢 アニメって、やっぱり“意図したものしか画面に映らない”と改めて感じました。実写は意図していないものがいっぱい映り込むわけですよ。でも、アニメは表情ひとつ、動きひとつ、背景に映っているものも全て(意図して)描いているわけだから。

鏑木 まぁそうですね。

古沢 そういう意味では、“作り手の意図の塊”なんだなって。そして、それが脚本を書きながらイメージしたものにすごく近かったので、感動しました。

鏑木 古沢さんの本のベースはやっぱり人間ドラマなので、そこは外さないようにしようと。ただ、若干ビビったのは、今後出てくる“エアレース”ですね(笑)。エアレースを描くのはとにかくカロリーが激重なので、普通はやろうとしても全員が止めるレベルなんですよ。でも、もう(脚本を)書いちゃっているのでやるしかない、という感じで(笑)。

古沢 ただ飛行機が飛ぶだけだから、そんなにとは思わないですよね。実写ならできないけど、アニメだったらできるんでしょ?ぐらいな感じで(笑)。

――アニメなら自由に何でもできそうな感覚ありますよね。

鏑木 むちゃくちゃ大変でした。でも、結果的には無事に終わって見栄えもよかったので、やってよかったと思いましたね。このくらい重いんだとカロリーも知れたので、後学のためにもいいんじゃないかなと。

――古沢さんの脚本の魅力のひとつに、キャラクターの軽快なやり取りもあると思います。そういう意味も含め、キャストの演技はどうでしたか?

鏑木 みんなプロなので、何の問題もなかったですね。こっちからキャストに指示をすることのほうがミスっていないか、と思ったぐらいで(笑)。

古沢 そうですね。僕も一度見に行きましたけど、何の違和感もなかったです。

――詐欺師という先入観もあってか、セリフがすべて怪しく聞こえて仕方なかったです。

鏑木 特にローランはそう思いますよね。

古沢 でも、監督も結構変えているんですよ。面白いセリフを足してくれたり。

鏑木 そこは共同作業ということで(笑)。このキャラクターはこう言いそう、こう言ったらいいんじゃないかと思ったところを。

――共同作業の中で、よりキャラクター性が強くなっていったわけですね。

鏑木 そうですね。そうやっていくとキャラクターが勝手に成長するというか。演出さんもおのおのが考えてキャラクターを動かすので、こちらとしてはそれを全て制御するか、それを楽しむかしかなくて。ある程度は制御するけど、制御しすぎない感じで遊ぶ、その楽しみが必要だと思うんですよね。この作品では、遊びの部分を結構多めに見ているところはあります。

――物語の内容は実際に見ていただくとして、第1話からいろいろ伏線が張られていると思います。そういった伏線は、どのように入れていくのですか?

古沢 そんなに計算してやるわけではなく、書きながら考える感じですね。後ろのほうを書いている時に、やっぱり最初のほうにこういうシーンがあったほうがいいんじゃないか、と戻って直したりを繰り返しながらやっています。

――最後に、楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。

古沢 この作品は普段アニメ見ない人も、老若男女みんなが楽しめますし、明るい気持ちになれると思います。エダマメと一緒に、世界中を冒険するような気持ちで楽しんでもらえればと思います。

鏑木 まずは見ていただきたいのと、見終わったあとにこの情勢がおさまったら世界中を聖地巡礼してほしいですね(笑)。

――ぜひツアーを組んで、二の足を踏んでいる人の背中を押してもらいたいですね。

古沢 すごい移動時間になると思う。

鏑木 結構すぐ行けますよ。愛ですよ、愛!(笑)

(取材・文/千葉研一)



【作品情報】
■TVアニメ「GREAT PRETENDER」

<放送情報>
2020年7月8日よりフジテレビ「+Ultra」にて毎週水曜日24時55分から放送
BSフジ、ほか各局にて放送
※放送日時は変更の可能性があります。

2020年6月2日よりNetflixにて順次独占先行配信
CASE1(1話~5話) 6月2日
CASE2(6話~10話) 6月9日
CASE3(11話~14話) 6月16日
CASE4 Coming Soon
※配信日時は変更の可能性があります。

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