ポイントは「青春」とこっそり忍ばせた「闇」!? 話題を呼んだ春アニメ「球詠」テーマソングを生み出したクリエイター・麻枝准(作詞・作曲)×MANYO(編曲)インタビュー

野球に青春をかける女子高校生たちの姿を生き生きと描き、アニメファンの心を熱くさせた春アニメ「球詠(たまよみ)」。先日、無事にテレビ放送を終え、さわやかなフィナーレに多くの視聴者を感動させた本作だが、その物語を彩った主題歌の存在も忘れてはならない。

七穂さんが歌うOPテーマ「Never Let You Go!」、新越谷高校女子野球部のキャスト10名が歌うEDテーマ「プラスマイナスゼロの法則」は、「AIR」「CLANNAD」「リトルバスターズ!」「Angel Beats!」「Charlotte」の企画・原作や脚本のほか、主題歌・挿入歌などを手がけ大きな話題を呼んだ麻枝准さんが作詞・作曲を担当。数多くのゲームミュージックを手がける人気クリエイターのMANYO(まにょっ)さんが編曲を担当したキラーチューンとして、2020年春アニメソングの中でもひときわ輝きを放っている。

今回は、新たな神曲を生み出したお2人に、楽曲制作秘話をうかがった。

ブラバンが応援しているようなイメージの「Never Let You Go!」

──最初に原作コミックを読んだ時の感想、印象を教えてください。

麻枝 太ももが太くて、ガチなスポーツ漫画なんだな、と思いました。

MANYO 骨太なストーリーや、細かいプレイ描写など、かわいいキャラクターとのギャップに驚きました。

──オープニングテーマを制作するにあたり、気を付けたこと、意識したことは何でしょうか?

麻枝 攻めている時のブラスバンドが奏でる応援歌のイメージを、なんとかボーカル曲に落とし込めないものかと、挑戦しました。

MANYO そんな麻枝さんの楽曲のイメージを崩さず、かつ「球詠」の世界観にも寄り添えるようなアレンジを心がけました。

──楽曲の聴きどころはどういうところでしょうか?

麻枝 サビのMANYOさんによるブラスアレンジと、ボーカルとのからまりあい具合です。カッコいいと思います。

MANYO やはり、麻枝さんの曲では珍しいブラスアレンジでしょうか。ホーンセクションも三管の生楽器を取り入れ、迫力を損なわないようにしています。

麻枝 最初に「ブラバンが応援しているみたいなアレンジにして!」とお願いしたと思います。

MANYO  アレンジ発注の段階から明確なイメージが麻枝さんの中にあったので、それを忠実に具現化しつつ、さらに広がりを持つように心がけていました。

──歌詞は、青春時代を思い出しながら紡いでいるようでもあり、まさに今試合の最中という印象もあります。作詞のうえで意識したところや、こだわりはどんなところでしょうか?

麻枝 まさに青春を意識しました。こだわりは、単純に前向きではない、闇をこっそり混ぜ込んでいるところです。

──歌唱担当の七穂さんについては、どのような印象をお持ちでしょうか? また、制作に関して何かやりとりはありましたか?

麻枝 すごく歌がうまい方だったので、レコーディングはスムーズにいきました。「アニソンが好きなの?」と聞いたら、まったくアニソンは聴かないらしく、安室奈美恵さんが大好きだと語っていたのが印象的でした。

MANYO 声量と技術、魅力をあわせ持つ、素晴らしいボーカリストですね。レコーディングの段階でかなりしっかりと歌い込まれていたので、安心して歌を託せました。

フルサイズは感動的な「プラスマイナスゼロの法則」

──エンディングテーマを制作するにあたり、気を付けたこと、意識したことは何でしょうか?

麻枝 曲だけはエンディングらしく、ほのぼのした感じを意識しました。

MANYO 「Never Let You Go!」と同じく、麻枝さんの楽曲のイメージを可能な限り損なわないように心がけています。こちらの曲のほうがより麻枝節が効いているように感じましたので。

──楽曲の聴きどころはどういうところでしょうか?

MANYO サビのブラスアレンジですかね。これは元々から入っていたフレーズですが、ボーカルのじゃまをせず、かつしっかりと主張している素敵なフレーズだと思います。

麻枝 テレビサイズにはない、サビの後に現れる大サビ部分です。

──確かにシンプルなバンドサウンドという印象の強いテレビサイズに対し、一気に盛り上がる終盤の展開は驚くと同時に感動的でもありました。

麻枝 この曲のブラスのメロディは、結構自分が作ったデモのまんまなんですが、その時点から、サビとラスサビは、ブラスのメロディありきで成立させていました。

MANYO 基本的には麻枝さん原曲の魅力を、いかに引き出すか……ということを第一義に考えてアレンジしています。我を出すアレンジではなく、自分自身も原曲の魅力を引き出しながら楽しんでいくような、そんなアレンジ過程でした。

──2番あたりから歌詞に「闇」成分が見え隠れし始めて、これもドキッとしてしまいました。

麻枝 この歌詞を声優さんに歌わせるって、自分もすごいことをさせちゃったな、と思います。それは自分の作風で、人生は楽しいことだけじゃない、すごい辛いことだってあるよ、というメッセージなのですが、それにしてもよくこれで通ったな……と今でも思いますね。

──歌うのは新越谷高校女子野球部の10人ですが、レコーディングには立ち会われましたか? また完成した音源を聴いての感想をお願い致します。

麻枝 残念ながら、自分はレコーディングには立ち会っていません。ラスサビと大サビに、ちょっと鳥肌が立つぐらい感動しましたね。

MANYO レコーディングはお任せさせていただきました。ミックス立ち会い段階から細かく歌をパートごとに聞いていますが、完成音源も楽しく聞かせていただいています。

麻枝准、野球愛のルーツを語る

──アニメ放送も無事に終わりましたが、感想はいかがでしょうか?

麻枝 久々にアニメを観たんですが、やっぱり自分の曲がオープニングテーマとして流れてくると感動がありますね。

MANYO のんびりとした最初の展開から、試合を重ねるに連れての緊張感の高まりがよかったですね。

──お気に入りのキャラを教えてください。

麻枝 中村希です。

中村希


MANYO
 芳乃ちゃんですかね。軍師タイプ好きなので……。

川口芳乃(左側)

──アニメの全エピソードの中で、特に印象的だったエピソードはどこですか?

麻枝 やっぱり中村希、初登場の回でしょうか。

MANYO 影森戦での白菊ちゃんのバッティング、かっこよかったです。

──ちなみに麻枝さんの作品といえば、青春と野球は欠かせないと思うのですが、野球に強い思い入れを抱くようになったのはなぜでしょうか?

麻枝 親がジャイアンツのファンで、小さい頃からその試合の中継をテレビで見せられていたんです。当時、大洋ホエールズがあまりに弱くて人気がなかったんですが、自分はそれを見て、「こんな弱いチーム、誰も応援していないに違いない……。だったら僕が応援しなくちゃ!」という気持ちに駆られて、そこからホエールズの応援を始めました。その時代からのベイスターズファンです。

──そんなエピソードがあったんですね! では、最後にアキバ総研読者の皆さんへのメッセージをお願いいたします。

麻枝 配信でも販売されているようなので、気になった方はぜひ、「Never Let You Go!」「プラスマイナスゼロの法則」を聴いてみてください!

MANYO 球詠、よろしくお願いします!

TVアニメ「球詠」Original Sound Trackも好評発売中!



【CD情報】

■TVアニメ「球詠」主題歌「Never Let You Go!/プラスマイナスゼロの法則」

・発売中
・価格:3,850円(税込)

<収録内容>
01 オープニング・テーマ「Never Let You Go!」
歌:七穂 作詞・作曲:麻枝 准 編曲:MANYO
02 エンディング・テーマ「プラスマイナスゼロの法則」
歌:新越谷高校女子野球部(前田佳織里/天野聡美/野口瑠璃子/橋本鞠衣/永野愛理/北川里奈/富田美憂/宮本侑芽/本泉莉奈/白城なお)
作詞・作曲:麻枝 准 編曲:MANYO
03 エンディング・テーマ「プラスマイナスゼロの法則」七穂Ver,
04 エンディング・テーマ「プラスマイナスゼロの法則」詠深Ver,
05 エンディング・テーマ「プラスマイナスゼロの法則」珠姫Ver,
06 エンディング・テーマ「プラスマイナスゼロの法則」希Ver,
07 エンディング・テーマ「プラスマイナスゼロの法則」菫Ver,
08 エンディング・テーマ「プラスマイナスゼロの法則」理沙Ver,
09 エンディング・テーマ「プラスマイナスゼロの法則」稜Ver,
10 エンディング・テーマ「プラスマイナスゼロの法則」息吹Ver,
11 エンディング・テーマ「プラスマイナスゼロの法則」怜Ver,
12 エンディング・テーマ「プラスマイナスゼロの法則」白菊Ver,
13 エンディング・テーマ「プラスマイナスゼロの法則」芳乃Ver,
14 オープニング・テーマ「Never Let You Go!」INST
15 エンディング・テーマ「プラスマイナスゼロの法則」INST

■球詠 Original Soundtrack

・発売中

・価格:3,300円(税込)
劇中伴奏曲41曲を収録

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