新コンテンツ「電音部」も電撃発表! kz(livetune)、TAKU INOUE、佐藤貴文、小宮有紗ら参加の配信オンリーDJイベント「ASOBINOTES ONLINE FES」レポート
「ASOBINOTES ONLINE FES」が2020年6月28日、新木場Studio Coastよりオンライン配信された。イベントのラストには新規コンテンツ「電音部」が発表された注目イベントの現地の様子を紹介しよう。
バンダイナムコグループは「アソビストア」に代表されるさまざまなサイトや活動に「アソビ」を冠するブランディングを行なっており、ASOBINOTES=アソビノオトはサウンドエンターテインメント事業が展開するコンテンツレーベル。その名の通り“オト”で“アソブ”がコンセプトだ。
「ASOBINOTES ONLINE FES」はそんなASOBINOTESによるオンラインDJフェス。昨年開催された「バンダイナムコエンターテインメントフェスティバル」のDJ版と考えていいだろう。元は観客を動員したイベントとして企画されていたが、昨今の状況をかんがみてオンライン配信オンリーに切り替えたようだ。
同イベントでは新木場Studio Coast内に「CHARACTER」「GAME」「VIRTUAL」「AKIBA POP」の4つのテーマのフロアを設定。同時に4つのフロアを進行し、アソビストアサイト、もしくはTwitchで映像を切り替えながら楽しむことができた。自宅にいながらにして楽しめるDJフェスというわけだ。各ステージの出演者は以下の通り。(敬称略)
CHARACTERフロア/kz(livetune)、TAKU INOUE、石濱 翔(MONACA) 、田中秀和(MONACA) 、DJ小宮有紗(OMOTENASHI BEATS)、DJ和、佐藤貴文(BNSI)、高橋花林(「アイドルマスター シンデレラガールズ」森久保乃々役)
GAMEフロア/大久保博(BNKEN)、渡辺量(BNSI)、船田純一(BNSI)、ミフメイ(BNSI)、岡田祥(BNSI) 【OB Guest】AJURIKA、ミヤケユウ aka eutron
VIRTUALフロア/Nor、YUC’e、DJ WILDPARTY、TAKUYA the bringer、健屋花那(にじさんじ)、シスター・クレア(にじさんじ)、星川サラ(にじさんじ)
AKIBA POPフロア/天音みほ・堀越せな(Mi☆nA)、蔀祐佳(リルネード)、kevin from fhana、PandaBoY、Ryu☆(EDP)、 DJ ネス from RAB(リアルアキバボーイズ) ※DJずっ from i☆Risは体調不良により欠席
会場構成は?
今回のイベントは先述した通り4フロアが設定されている。その中で、もっとも広いスペースだったのが2000人ほどを収容する横長のメインホールに用意されたCHARACTERフロアだ。このフロアでは、実際のイベントに近い照明や映像演出がほどこされた。
ステージ前では「パックマン」×「ルービックキューブ」40周年同級生記念企画として、1600個のルービックキューブでパックマンのモザイクアートを作成するチャレンジがおこなわれていた。
どのような状況でも常時稼働しているフロアを作るために、CHARACTERフロアのステージ準備中は総合MCの佐野電磁さんが同企画の様子を伝えながらMCでつなぐ構成だ。
GAMEフロアはメイン会場に隣接する倉庫のようなビジュアルの小ホールに設定。
バンダイナムコグループのサウンドクリエイターを中心にしたメンバーが、同社の時代を超える名作ゲームにフォーカスしたDJを披露。秘密基地のような空気感のフロアに、バンダイナムコ研究所の大久保博さんやLindaAI-CUEさん(NBSI)といったゲームサウンド界の重鎮が目を光らせる。DJミライ小町と「BanaDIVE AX」による配信実験(後述)はここをベースに行なわれた。
VIRTUALフロアはメインホールと同じ建物内、普段ドリンク交換を行なうカウンターなどがあるホワイエに隣接したラウンジに特設ブースを設定した。
現地にあるのはスッピンに近いステージと音響・映像配信関連の設備だけで、生身のDJのみがここでパフォーマンスを披露。ビジュアル演出やにじさんじのVtuberたちについてはデータ上で合成して配信映像に乗せるという、最先端なアプローチのフロアだ。
AKIBA POPフロアは、会場の奥側にある小型の屋外プールに隣接したDJブースに設定。
正直こんなエリアがあることは初めて知ったが、演者の中にはDJブースを出てプールの前で踊っていた人もいるらしい。
音響やブースや配信の機材はメインホール側の屋内にあるため、屋外のDJブース前にカメラがあるだけの空間はちょっと寂しい。だが演者によれば完全な無観客よりも、多くは無言の関係者たちが見つめるメインホールもそれはそれで難しさがあるとのことだ。
上記の4フロアで約5時間、同時進行で開催されるコンテンツレーベル主催のDJフェスという、前例のない配信プログラムが「ASOBINOTES ONLINE FES」の概要だ。
DJミライ小町と「BanaDIVE AX」によるDJパフォーマンス
さて、今回注目したいのがGAMEステージで開催された「ミライ小町」によるスペシャルアクトだ。ミライ小町はバンダイナムコ研究所のオリジナルキャラクター。彼女のDJデビューに用いられたのが同研究所の「BanaDIVE AX」という技術だ。
「BanaDIVE AX」は、DJパフォーマンスを組みこんだゲームAIが、3Dキャラクターのモーションやライブ空間の演出を連動させる技術。映像内でDJを行なうミライ小町のモーションやライブ演出は全てAIで制御されているというから驚きだ。
ミライ小町も主戦場はオンライン上だったが、会場にも関係者確認用のモニターが用意された。AIによるDJという試みに、モニターを見守るビッグネームの姿もあった。映像に映るミライ小町が、映像内のスクリーンに映し出された(ややこしい)ゲーム画面とともにパフォーマンスを繰り広げるのは序の口。コードを読みこんだスマホのカメラ越しにモニターを見ると、モニター映像からエフェクトが飛び出してくる様子を体感することができた。家庭で、店頭で、スマホがあればARでのDJ体験ができる技術として非常に応用の幅が広そうだ。
同ステージではリアルタイム投票による楽曲選曲も行なわれ、たとえば「EUPHORIA(RR 20th Anniv. Mix)」と「DRIVE U 2 dancing(AJURIKA Remix)」からオンライン視聴者が聴きたい方をリクエスト。その後、投票結果を受けたパフォーマンスをミライ小町がスタートする。これらはすべて、アプリなどのインストールなしにブラウザー上で完結する。
もちろん、すぐれたシステムもそこに乗るコンテンツがあればこそ。「キラメキラリ」や「さいたま2000」といったバンダイナムコの珠玉の楽曲の数々は多くのファンを楽しませ、「さいたま2000」は一時Twitterのトレンド入りも果たした。LindaAI-CUEさんが会場にいるならDJもやってほしいと思っていたファンも、クライマックスの「さいたま2000」で気持ちが満たされたのではないだろうか。
リアルのライブ環境の先行きがいまだ不透明な環境で、研究の成果を公に示す今回の実験がチームにとっていかに重要で大きなチャレンジだったことだろう。それは、ミライ小町のスペシャルアクトが無事成功に終わったあと、GAMEフロアエリアから自然に拍手が巻き起こったことからも感じられた。
もちろんクリエイターによる生身のDJも熱く、大久保博さんは「リッジレーサー」尽くしというべきセットリストを披露。バンナムサウンドOBとして登場したAJURIKAさんは、別フロアで佐藤貴文さんや高橋花林さんが「アイドルマスター」縛りでDJをしている最中にいわゆるNの系譜(「Needle Light」、「Nothing but You」、「Neo Beautiful Pain」など)の楽曲を流して視聴者に悲鳴をあげさせた。GAMEフロアをプロデュースした渡辺量さん自身が、真裏のTAKU INOUEさんのDJを見られなかったことを嘆いていたのはこのイベントならではの出来事だった。
新規コンテンツ「電音部」の壮大なお披露目の場
今回のイベントの最後には、新規コンテンツ「電音部」のプロジェクトスタートが告知された。
電音部の原作は「音楽」であり、ダンスミュージックを中心として展開する。
楽曲提供にはAiobahn、kz(livetune)、ケンモチヒデフミ、KOTONOHOUSE、PSYQUI、佐藤貴文(バンダイナムコスタジオ)、Shogo&早川博隆、周防パトラ、Snail's House、TAKU INOUE、TEMPLIME、tofubeats、Nor、パソコン音楽クラブ、ミディ&瀬戸美夜子(にじさんじ)、Moe Shop、YUC'e、Yunomiら、そうそうたる面々が名を連ねた。
ミライ小町が実験を行なった「BanaDive AX」を新技術として投入し、各ステージにDJとして出演していた声優やアイドルも、多くが本作で声優キャストを担当するというわけだ。
アキバエリアの声優は「ディアステ」ことDEARSTAGEに所属するアイドルの蔀 祐佳さん、天音みほさん、堀越せなさんが担当。ディアステといえば「アイカツ!」シリーズの歌唱担当を思い出す人も多いだろう。
シブヤエリアの声優は「にじさんじ」所属のVtuberである健屋花那さん、シスター・クレアさん、星川サラさんが担当。Vtuberと「BanaDive AX」を生かした配信とは相性がよさそうだが、リアルのイベントや番組でのVtuberの扱いがどうなるのかも気になるところだ。アイマスが自分にとって特別な存在だったというシスター・クレアさんが、夢がかなったと報告する配信を当日行なっていたのも印象的だった。
ハラジュクエリアは小坂井祐莉絵さん、大森日雅さん、長谷川玲奈さんとフレッシュな声優陣が並んだ。
そしてアザブエリアは秋奈さん、小宮有紗さん、澁谷梓希さんという実力派声優陣が担当。アイドルコンテンツやアニソンDJ界隈に詳しい人から見ればレジェンドクラスと言ってもいい顔ぶれだろう。今回のイベントでは小宮有紗さんが、「ラブライブ!サンシャイン!!」で積み重ねて来たものと、OMOTENASHI BEATSレーベルで磨いてきたアニソンDJとしての顔の両面で視聴者を魅了していた。
このコンテンツの主役は音楽であり、その源泉はクリエイターであることを印象づけたのがDJ陣のパフォーマンスだった。CHARACTERステージのラス前に登場したTAKU INOUEさんはアニソンとDJの歴史を塗り替えたと言ってもいい「Hotel Moonside」からスタートすると、「秘密のトワレ」「クレイジークレイジー」「ミラーホール・ラブ」「Radio Happy」といった名曲を連発。その中に「電音部」楽曲だと思われる「Mani_Mani」をさらりと忍ばせた。「アンチグラビティ・ガール」の月ノ美兎の叫びにシンクロするようなTAKU INOUEさんの気迫が強く印象に残った。
そして大トリ、ラスボスとして登場したのがkzさんだ。大胆にリミックスした「SEVENTH HAVEN」を初手にブチかますと、バンナムコンテンツ曲、「Tokyo 7thシスターズ」、にじさんじを中心としたVtuber曲、原点の初音ミク曲にさまざまなアレンジを施しながら自由自在に渡っていく。kzさんは「いい曲は何回かかってもいい」とすでにほかのステージでもかかっていた「Radio Happy」「カレンダーガール」を終盤に持ってきたが、それだけ自身のリミックスに自信を持っているようにも感じた。kzさんのステージ中に、スクリーンには今回のイベントビジュアルを担当したMika Pikazoさんのイラスト制作過程を収めたペインティング映像が上映されていた。そして、ラストに新曲を披露したkzさんが示したスクリーンに映し出されたのが「電音部」の告知映像だったというわけだ。
4ステージ同時中継、アーカイブなしという今回のイベントの全容を把握している人はおそらくいないだろう。しかしあの場所にあった熱量とクオリティ、コンテンツレーベル主催の音楽イベントのさまざまな常識を打ち破った自由さが、これからどんな作品性につながっていくのかを楽しみにしたい。
7月3日には早くもYouTube LIVEにて配信番組「電音部企画会議」の開催が予定されている。
(取材・文/中里キリ)
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