「よりもい」「あのはな」「ナンとジョー先生」──今だからこそおススメの「泣けるアニメ6選」!【アキバ総研ライターが選ぶ、アニメ三昧セレクション 第1回】
2019年11月22日、中国の武漢市で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症例が初めて確認されて以降、感染が世界中に拡大し、日本もいまだその渦の真っただ中にいます。
アニメ業界もコロナの大きな影響を受けているのはご存知の通りで、まず、2月に放送中だった「とある科学の超電磁砲T」が新型コロナの影響による制作の遅滞と第7話の放送延期が発表されると、次々とアニメ作品の放送延期やアフレコ中止が報道され、7月期アニメどころか、10月期アニメにも放送延期の影響を及ぼしています。
当然、関連イベントも次々と中止に追い込まれ、毎年8月末に開催される「Animelo Summer Live」(通称「アニサマ」)も2020年の実施は中止を決定しました。
緊急事態宣言による外出自粛の中、さまざまなアニメ作品に酔いしれる機会となった人も多かったようです。まだまだ予断を許さぬ状況の中、そして地上波でアニメが再放送される機会が少なくなった今、ここでは過去の良作、特に“泣ける”アニメを紹介したいと思います。なにせ歳をとって涙腺がゆるゆる状態の筆者にとって非常に身近な話題なので。
最初に“泣ける”アニメを考えたとき、筆者の頭に浮かんだのは「よりもい」こと「宇宙よりも遠い場所」でした。
2018年の作品ですし、この年のベストアニメにあげる人も多かったのですでに見た方も多かったでしょう。「アキバ総研アニメ大賞2018」でも第4位にランクインしました。それでもあらためてお薦めしたくなる作品です。
⇒年間ベストアニメを決めよう!「アキバ総研アニメ大賞2018」
物語は、高校2年生の玉木マリ(通称、キマリ)が、南極でお母さんが消息を絶ってしまった小淵沢報瀬と出会うところから始まり、三宅日向、白石結月と共に南極を目指し、到達し、帰ってくるまでが描かれます。ひと言で言ってしまえば、4人の女の子たちが旅を通じて自分の殻を破る成長物語ですが、脚本と演出には伏線の数々が詰め込まれ、生み出されるドラマは非常に濃厚でした。
ただ、それらの伏線は、物語を劇的に展開するための謎でも仕掛けでもなく、キャラクターの深みを表現するために存在していました。この子があのときにこう言っていたのはこういう気持ちだったからなんだ、ということがのちに判明します。その流れはまるで、昨夜はオムライスを食べたから今夜はそばって言い出したんだな、みたいな。生きている中で人が見せる、自然なつながりを見せてくれました。
そこには、いしづかあつこ監督の、リアルな女の子を描こうという強い信念があったと思います。
4人の女の子には女性ならではのリアルな感性が込められていました。だから、彼女たちが話す言葉、行動、しぐさ、表情、その1つひとつがとても心を打ちました。感情の揺れ動き、機微を感じ取れたのです。セリフやオーバーなアクションではなく、彼女たちを見守っているといつの間にか共感し、理解でき、友達になれたのです。
そこには、いしづか監督とともにお話を作り上げた、シリーズ構成・脚本担当の花田十輝さんの力もありました。いしづか監督の意図を組んで、愛らしい女の子を生み出した、キャラクターデザインの吉松孝博さんもそうです。いやいや、制作進行から美術さん、撮監さん、ありとあらゆる人がいしづか監督の描きたいグラフィティを形にするために力を注ぎました。
筆者は「よりもい」のBlu-ray&DVD封入ブックレットを制作させていただく機会に恵まれ、多くのスタッフにお話をうかがうことができました。なので、いかにスタッフの皆さんが情熱と愛情を持って作品に挑んだかを知っています。ていねいに、細やかに、すべての登場人物が、背景が、物語が描かれていきました。
都合よく南極に行き過ぎる? 設定がリアルではない?
そんな声もありましたが、設定はあくまで設定、リアルであるべきなのは人物描写です。自分の年齢の半分しか生きていない、空想上の女の子になぜ泣かされるのかといえば、それはリアルだからです。遠い星で生まれ育った、言葉も文化も違う生き物に感情移入するのはなかなか難しいものです。
でも、キマリたちは、ほかの作品では主人公になるような女の子たちではありませんでした。リーダーでもヒロインでもなければ、アウトローでも被害者でもない。ごく普通の女の子たちが南極への旅という非日常に入り、そしてまた日常に戻ります。報瀬を除けば、将来観測隊員を目指すこともないでしょう。違う世界とはいえ、何かをなすような大人物にはならないと思います。人生の旅はそう簡単に航路を変えることはありません。でも、彼女たちの心のうちを想像してみれば、大きな成長が見えます。
長い目で見れば、南極への旅はターンアウトスイッチとなり、それぞれが違う線路に入ったはずです。きっと目的地はちょっと違ってくるでしょう。そんな彼女たちに、自分がかつて通った道、通りたかった憧れの道を見つけ、共感し、感動し、つい号泣してしまうのです。
ちなみに、“泣ける”アニメではないのですが、「よりもい」と同じ2018年、筆者は再びスタッフの大いなる情熱と愛情によってアニメが作られた現場に触れます。「ハイスコアガール」「ハイスコアガールII」という作品でした。
原作は、1990年代の対戦型格闘ゲームブームに沸いたゲームセンターを舞台に、主人公の矢口春雄(通称、ハルオ)とヒロイン・大野晶の戦いと愛の行方を描いたノスタルジックラブコメディ漫画ですが、作中に登場するゲーム画面やゲーム筐体といったゲーム周辺のシチュエーションを再現させるため、スタッフ一同が並々ならぬ労力を費やしています。これぞまさに「神は細部に宿る」でした。
それもこれも制作・アニメプロデューサーや監督といった旗頭の気合によるもの。特に「とある」「ダンまち」など、J.C.STAFFが手がける人気アニメシリーズの撮影監督である福世晋吾さんが放った、「ハイスコアだけやっていたい」「ハイスコアをやれたからアニメ人生を終えても」という言葉は冗談9割でも心に突き刺さりました。それでいて、もうひとりのヒロインである日高小春の心情を、ドラマの描き方には定評のある山川吉樹監督が懇切ていねいに描いたことで“泣き”も味わえるアニメでもありました。こちらもぜひ。
2018年はさらにもう1本、“泣ける”アニメとして紹介したい作品があります。
ここ数年、日本では劇場アニメが非常に盛り上がりを見せていて、「この世界の片隅に」「映画 聲の形」「ペンギン・ハイウェイ」などなど、良作が次々と生み出されています。2018年の9月に公開された「若おかみは小学生」もそのひとつです。
TVシリーズも同年4~9月に全24話で放映されましたが、個人的にはシンプルに泣ける劇場版がとても気に入っています。先日、NHKで放送された際も大いに盛り上がりました。劇場版で「若おかみ」という作品の概略を知ってもらってから、若おかみとしての奮闘をつづったTVシリーズに戻るという形でも十分楽しめると思います。
原作は、令丈ヒロ子さんによる児童文学の傑作で、主人公は小学6年生の関織子(通称、おっこ)。おっこは交通事故で両親を亡くし、祖母である峰子の営む旅館へと引き取られます。当然、「若おかみは小学生!」とはいっても力不足で、自分だけではまだまだ何もできません。でも、大人やユーレイたちといった周囲からのやさしさや励ましを受け、おっこは必死に前を向いて頑張ろうとする、その気丈さには心打たれます。自分がいかに不甲斐ない大人かを思い知らされます。
泣けるアニメということで忘れられないのが、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(通称「あのはな」)です。大ヒットしたアニメですが、TVシリーズが2011年放送、その最終回から1年後を描いた劇場版の公開が2013年なので未見の人も意外と多いかもしれません。
小学生の頃は「超平和バスターズ」として仲良しだったのに今は疎遠になってしまった6人の友情物語、を「あのはな」は描きます。
疎遠になったきっかけは、本間芽衣子(通称、めんま)の事故死。でも、そのめんまが幽霊(?)となって、宿海仁太(じんたん)の前に現れたことから5人の中で淀んでいた過去が流れ始めます。その、かすかなサイコホラーテイストの設定からか、放映開始前はあまり話題になりませんでしたが、放映が開始されるとすぐに高い評価を受け、舞台となった秩父には多数の聖地巡礼者が訪れるほどの人気作となりました。オリジナルアニメとしては異例の実写ドラマ化もされています。
長井龍幸監督やキャラクターデザインの田中将賀さんとともにこのヒット作を誕生させた立役者が脚本の岡田麿里さんですが、やはりナチュラルな若者を描くことに心を砕いたそうです。それゆえ超平和バスターズの6人の言葉は瑞々しく、過去に縛られた5人の苦悩が手に取るように伝わってきました。昨今のアニメらしく、非常に芝居がかったアニメーションにはなっていますが、一線を超えていないというか、そのため、最終回で彼らが、純真の化身とも呼べるめんまとの再会によって解放、浄化されていくところでは涙腺を締めることはできません。
ところで、「よりもい」も「若おかみ」もマッドハウス作品で、長井龍雪監督もマッドハウス制作の「ちょびっツ」で初演出・絵コンテを担当しています。筆者の泣けるポイントとしてマッドハウスというのはキーになっているのかもしれない、と勝手に想像を馳せているのですが、そのあたりも個人でアニメを楽しむときの楽しさ。せっかく自宅でアニメ三昧するならば、さまざまなデータや情報に触れることで面白い発見ができるかもしれません。
アニメーションを見て泣いた回数で言えば、圧倒的に2000年代以前の作品が多かったです。そこで、1990年代で一番泣かされたアニメをぜひ紹介したいと思います。
1993年、「フランダースの犬」や「あらいぐまラスカル」を生んだ「世界名作劇場」シリーズからひとつの作品が誕生しました。それが「若草物語 ナンとジョー先生」という作品です。
原作はルイザ・オルコットの「第三若草物語」。タイトルでわかるように「若草物語」の続編で、「若草物語」も1987年には同じ世界名作劇場で「愛の若草物語」としてアニメ化されており、「世界名作劇場」シリーズで唯一の続編作品でもあります。
「世界名作劇場」としての原点回帰として日常を丹念に描いた作品でしたが、いや、これがもう泣ける泣ける。前作を知らなくても大丈夫です。
原作とは異なり、主人公をナットという男の子から少女ナンへと改変しているのですが、そのナンが登場してからがヤバいです。物語は、「プラムフィールド」という私立学校を舞台に、子どもたちと周囲の大人たちが織り成す出来事が描かれていきます。特に夫婦で学園を運営しているベア夫妻(妻は若草四姉妹の次女ジョー)の生徒に対する愛情が素晴らしく、ときにやさしく、ときに厳しく、生徒の心を解きほぐしていく姿勢、何か問題を起こした生徒との接し方には感銘を受けます。
また、古典文学が原作らしく、素晴らしいお言葉の数々。見てから30年近く経ちますが、いまだに心をとらえて離さないのが、ベア先生が友人であるジョン・ブルックを称した言葉。
「ジョンはいい人(原作では“Good”)だった。それがすべてだった。しかし、だからこそ私は彼のことを誇りに思う」
ジョン・ブルックは、富を持つ者でも、偉大な業績を残したわけでもない。ただただ善人でした。でも、だからこそ尊敬すると言うのです。善き人であることの難しさを知った瞬間でした。ジョー先生役の山田栄子さんは、「世界名作劇場」シリーズでは全声優の中で最多の10作品に出演、2度の主演を務めた方ですが、最終回のアフレコで泣き出されてしまったそうです。そこまで堪えていた、主演の松倉羽鶴さんなど他キャストの方々も涙腺が崩壊してしまったとか。
「世界名作劇場」では最多7本を担当し、映画「ドラえもん」の総監督を務めたことで知られる楠葉宏三監督のきめ細やかな演出。「となりのトトロ」や「おもひでぽろぽろ」で作画監督を務め、名作劇場のようなアニメーションを作りたくて、日本アニメーションの門を叩いたという佐藤好春さんによるキャラクターデザインも、少年少女たちを愛らしく描いています。全40話、ぜひ完走してほしいです。
時間があるなら手を出してほしいのが「ミスター味っ子」です。原作、あるいはトリップしまくるアニメ版味皇さまの奇行しか知らない人が多いかもしれません。しかも全99話あります。
でも、当初25話予定だったのが延長に延長を重ねた結果、25、50、74、99話は実質上の最終回にあたる話数になっているという構成で、毎話毎話で大いに盛り上がる展開もあって99話という長丁場を感じさせません。
そして75話以降の第4シリーズはシリアスな展開な主流となり、クライマックスに突入した97話以降はとにかく泣けます。料理漫画だった原作を、今川泰宏監督が「料理とは何か」「おいしいとは何か」を突き詰めた結果、ヒューマンドラマとして昇華させたからです。その点で「味っ子」は、アニメ化するとはこういうことだ、アニメ化にはこんな意義がある、と教えてくれる偉大な作品であり、教材であるとも考えています。
今川監督は、味皇さまのオーバーアクションという発明を生み出しましたが、感情のコントロール演出が非常に巧みな方でした。食べて強く感動したから爆発させる、そのいっぽう、心の奥底にたまった感情が零れ出すときの切なさも増幅させる演出をもたらしてくれました。そのため、感情移入できる、濃厚なヒューマンドラマ作品となりました。
また、作画で参加されていた山本佐和子さんは、初めて筆者が意識したアニメーターさんです。いつもはかわいいテイストの「味っ子」がかっこよくなるとき、必ず彼女の名前がテロップに上がることに気づきました。一馬に号泣させられる97話も山本さんが作監で、それは泣きという点において多分に影響していました。山本さんは、「ラブライブ!」シリーズのキャラクターデザイン・アニメーションディレクター・総作画監督を務められた西田亜沙子さんの師匠に当たる方ですが、今年5月に逝去されたことを知りました。ここで心よりご冥福をお祈り申し上げます。
コロナ禍で家にいる時間が長くなり、いろいろな作品を見る機会になっているかと思いますが、今だからこそ、話数を重ねられていた過去アニメ作品に触れてほしいと思います。
長いスパンで描かれる物語には、笑える回、燃える回、泣ける回と、喜怒哀楽の振り幅が大きく込められており、第1話では思いもよらない方向に進んでいくこともしばしばです。ぜひ、あなただけの一作を見つけてください。
あ、男泣きできる「新世紀GPXサイバーフォーミュラ」(特にTVシリーズからOVAの「-11」「-ZERO」への流れは本当に血が湧きたちます)もぜひ。
<ライター紹介>
清水耕司
しみずこうじ
編集・執筆。出版企画に「子供ができて知ったこと」「サイバーフォーミュラ 25周年デザインワークス」。編集物に「ファイアーエムブレム大全」、「animelo summer live」オフィシャルパンフレット「東大王 知力の壁に挑め!最強クイズドリル」、各種アニメBD/DVDブックレットなど。「魔夜会」の構成・演出も。サンホラ芸人。右投右打。
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