アニメファン直球で制作!フル3DCGアニメ「楽園追放」監督 水島精二インタビュー
昨年から今年にかけて次々とセルルックキャラクターの3DCGアニメが発表され、アニメファンの3DCGに対する期待が盛り上がる中、水島精二監督、虚淵玄シナリオによる劇場オリジナルアニメ『楽園追放 -Expelled from Paradise-』が11月15日より劇場上映される。
本作は美少女キャラのかわいらしい表情や未来の電脳バトル、SFロボットアクションや「人間らしさとは?」に迫る哲学性など、アニメファンの期待に応えるさまざまな要素を盛り込み、それらを3DCGによって作り上げた作品だ。すでに試写会でも好評を博し、PVも注目を集めるこのアニメーション技術と物語作りについて水島精二監督を直撃。お話をうかがった。
3DCGの先端を行く監督が作り上げるアニメーション映画
――水島監督のもとにはどのような形でのオファーがあったのでしょうか?
2011年に東映アニメーションの野口プロデューサーから、オール3DCGの作品を一緒に作りませんかというお誘いをいただき、そこでいくつかのCG制作会社さんとのテストムービーを見せてもらいました。その時点でも自分の中での3DCGの表現を書き換えるクオリティで。他の人に先駆けてこのクオリティで3DCG作品を作れるのはうれしいなと思いました。
――水島監督は『鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』や、『機動戦士ガンダム00』、『はなまる幼稚園』(いずれも監督作品)など、積極的に3DCGを採り入れるという印象があります。
そのいずれも3DCGを担当したのがサンジゲンなんですよね。業界全体の動きとして、作画だとちょっと労力がかかり過ぎるものについては3DCGにしようという動きはありましたが、サンジゲンの場合は積極的に作画が担当している部分まで3DCGで表現しようという明確な意志がありました。そんな彼らと付き合いがあったので、他の監督さんよりも3DCGに触れる機会が多かったかもしれません。
――監督が表現したいビジョンに合わせてテクノロジーが向上していった実感はありますか?
そうですね。せっかくだから作っていく中で試行錯誤するほうが面白いんじゃないかという感覚があります。僕自身、新しいもの好きなところがあると思うので、早いうちに自分の作品に採り入れていくんです。考え方がふたつあって、早めに取り組んで多少思い通りに行かなくても自分の作品の中で技術を育てていく考え方と、勝負できるところまで我慢して我慢して採用する場合。
僕は前者の感覚で作っていくから、その意味でも本作は合っていたと思います。なかでも今回制作を担当したグラフィニカは、デモリールを提出してくれた時から、主人公のアンジェラのモーションの付け方とか髪の毛のなびき方といった、基本的な部分がきちんと作られていただけでなく、絵にも雰囲気があったし、センスも感じられたのできちんと向き合えれば結果を出せると感じました。
ディテールを積み上げ、洗練させたシナリオ作り
――虚淵玄さんの書かれたシナリオをお読みになっての印象についてお聞かせください。
最初に読んだのはプロット(おおまかな構成メモ)だったんです。彼の書くものですから、ここからどうふくらませるんだろうという興味はありましたし、この作品で何を語りたいのかは、すでにそこにありました。細かくディテールを積む中で虚淵くんらしい形のシナリオになったと思います。
――虚淵さんらしさとは?
彼はゲーム畑出身なので、テキストの人だと思うんです。構成がうまくて、本質的なセリフに行き着くまでの枝葉の部分が大事で本を切りづらい、ある意味で演出家泣かせのところはあります(笑)。ただ、長文の会話というのはひとつの芸になっていると思うので、そこはきちんと生かしたいなと。ある語りたいテーマがハッキリしていて、それに向けて会話やシチュエーションですごく巧みに追い込んでいく感じというのはさすがだなと思いましたね。非常に歯ごたえがありました。
――テキストの分量も多かったですか?
最初にあがったものを演出していくと2時間半くらいになりそうな感じでした。それはやっぱり会話の尺が多かったから。抜いても物語上では支障がないかもしれないけれども、それがあることで世界への理解が深まって、登場人物が考えていることがすごくわかりやすくなるよう書かれていたんです。だからといって映画の尺を優先でポンポン会話を並べても、セリフ説明だけの映画になってしまう。やっぱり世界をふくらませて会話として成立させたいという思いがありました。
――それをどのように解決したんですか?
東映アニメーション側からは2本立てにしますかという提案もあったのですが、虚淵くんの語りたいテーマ自体はすごくベーシックなお話なので、1本でやったほうがいいですよと提案してくれて、分量を減らすことにしました。そこではじめて、僕から映画として90分くらいの尺でまとめるうえでの会話のテンポとか物語の進行や全体を見渡した構成のひな形を出したんです。
この会話は重要だけど分量を減らして、後回しにして別の流れの中で説明しようとか、映画全体の中のここまでで何分かけるといった自分的な黄金率を提示して、それにそってすべて作っていったんです。そのあと絵コンテでセリフの言い回しを詰めたり、カッティングで調整し、シーンの入れ替えをして、さらに色々な人の意見も取り入れながら何度も検証を重ねて現在の尺に仕上がったんです。
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