【ゲームレビュー】「OMEGA 6 THE TRIANGLE STARS」は、大らかなスペースオペラ世界で冒険を楽しめる16ビット時代リスペクトのアドベンチャーゲーム!
任天堂で「F-ZERO」「スターフォックス」「ゼルダの伝説」シリーズのアートディレクションやキャラクターデザインを手がけた今村孝矢氏が独立。新作ゲームを発表する……ということで話題を呼んだのが、「OMEGA 6 THE TRIANGLE STARS」だ。
本作は、今村氏がフランスで発表したオリジナル漫画「OMEGA6」を原作とし、16ビット時代をリスペクトしたピクセルアートのコマンド選択式アドベンチャーゲームという、尖りに尖ったアドベンチャーゲームである。本稿ではこの「OMEGA 6 THE TRIANGLE STARS」のプレイフィールをネタバレなしでお伝えしていこう。
本作の主人公は、新天地を求めて宇宙を旅する2人の人造人間、サンダーとカイラだ。地球に住む人類は高齢化が進み、都市の多くは宇宙移民に占領された状態。長寿研究の権威であるフランクリン博士は、こうした現状を憂えてサンダーとカイラを創造。人類が繁栄できる新天地を探す使命を与え、宇宙船「オメガ6」で2人を送り出した。
今回、2人が冒険するのは多様な宇宙人でにぎわうインポスター、過酷な環境の炎の惑星イグニ、富豪が集まる氷の惑星フロスララという3つの惑星。はたしてどのような冒険が繰り広げられるのだろうか……。
SFものといっても、身構える必要は一切ない。異種族なのに地球人よりも俗っぽいエイリアンたちが入り乱れ、宇宙空間に「宇宙チラシ」が舞い、惑星をローンで売り買いするような、昔懐かしいスペースオペラ的な世界なので、理屈抜きにして楽しめるのである。
まず目に飛び込んでくるのが、今村氏デザインのキャラクターたちだ。彼らは今村氏の持ち味であるアメリカンコミック的なスタイルで描かれており、実に個性的。キャラクター的にも王道かつ親しみが持てる人々だ。主人公の2人は人造人間ではあるものの、サンダーはタフガイだが盆栽など男のロマンを追求しがち、カイラは現実主義者的な側面が強めで、ひとたび怒ると恐ろしい……という人間臭さがあり、熟年夫婦漫才的な絡みが面白い。
また2人をサポートするロボットのプロップとお調子者のエイリアンであるフラボー、見た目は怖い首なし騎士だが物腰は柔らかいヘッドレスといったキャラクターたちは、ひと目見れば顔と名前を忘れることがないくらい。彼らが動けばいくらでも話が生まれてきそうな王道感が心地いい。
彼らが出会うエイリアンたちも、魚や豚など動物モチーフのものから、腹に顔が付いている者がいれば、目玉から直接手足が生えた者や、顔が巨大な唇と目玉だけで構成されている者がいるなど、個性の塊ばかりだ。そんな彼らが3つの惑星の雑踏や荒野にたむろしているのだ。
こちらに金をせびってくる者あり、戦いを挑んでくる者あり、なかにはどう見ても地球人には見えないのに「地球人」を名乗って怪しげなセールスをする宇宙人までいたりする。新顔が現れる度に敵か味方かと身構え、一筋縄でいかない連中と渡り合うのは冒険ものの醍醐味。多種多様なシルエットとビビッドなカラーリング、レトロフューチャー風のデザインとピクセルアートがマッチングしており、「スター・ウォーズ」エピソード4の酒場や、それよりもさらに昔のSFアドベンチャーもののような往年のスペースオペラ感を満喫できる。出会ったエイリアンたちは図鑑に登録されていくため、次はどんなヤツが出てくるのかとモチベーションも上がるのだ。
そして、ゲームシステムはポイント&クリックをベースとした8~16ビット時代リスペクトのアドベンチャーゲームなのだから、当時を知る人にはたまらない。手がかりを求めてピクセルアートの背景をなめ回すようにクリックし、背景のポスターやら看板やらに仕込まれた本筋と関係ない小粋なメッセージやフレーバーテキストの作り込みに膝を打つという感覚は、まぎれもなくあの時代のもの。画面上部のコマンド類も、ホビーパソコン最盛期ならショートカットとしてファンクションキーが割り振られていたのだろうか……などと考えると顔がにやけてしまう。
その一方で現代的なところも多く、印象的なのがお金のフィーチャーだ。ゲームを進めるにはお金を稼ぐ必要があり、そのためには配達や賞金首捕縛、外害獣(モンスターのようなもの)の討伐といった仕事をこなさなければならない。この辺りは近年のゲームでいうクエスト的な趣で、お金をためること自体が楽しくなってくる。時には惑星の滞在権が日割りになっていて、期限切れになる度に再購入が必要なんてこともある。宇宙なのに俗っぽいスペースオペラ感の演出でありつつ、お金がうまく活かされているということだ。
また、後述する戦闘で役立つ盆栽も現代的なフィーチャーだろう。「オメガ6」の船内にはサンダーご執心の盆栽ルームがあり、そこには不思議なフルーツを実らせる盆栽が栽培されている。盆栽の鉢や枝を自分好みにアレンジでき、カスタマイズの面白さが現代のゲームっぽい。美術品を集めることも可能で、こちらも現代的なコレクションの楽しさといえる。
特に印象深いのが戦闘だ。本作の戦闘はいわゆるじゃんけんになっており、出せる手は「じゃんけんカード」として表されている。こちらと敵でカードを出し、勝てればダメージを与えられ、負ければその逆。どちらかの体力が尽きると決着……とわかりやすい。もちろんカードは有限で、手持ちを使い切るまでは補充されることがない。つまり、肝心な時に肝心な手のカードがない、なんてことも起こり得る分けだ。
敵味方ともに手札が限られたじゃんけんだけに、敵の手札と傾向を読むことが重要である。敵も「じゃんけんカード」のデッキを持っているが、一部は裏返されており、中身はわからない。得意技で勝てる手札だけが表にされているが、残りが何であるかは自分で推理しなければならないのだ。
サンダーはパー、カイラはグーが得意技で、この手で勝つと与えるダメージもより大きくなるが、じゃんけんの勝敗に何らかの補正が付くわけではない。敵がチョキやパーを出してきたら普通に負けてしまい、貴重な得意技を浪費させられてしまうのである。そうならないよう、敵がこちらの得意技をつぶしにくるようであればその裏をかき、一部だけ公開された相手の手札を見つつ、残りが何かを推理する……といった心理戦を楽しめるのである。
基本ルールがじゃんけんだけに、勝敗には運が絡むこともあるが、イベント戦などどうしても勝ちたい局面もある。
そんな時は盆栽に実ったフルーツの出番だ。体力を回復させたり、能力をアップさせたり、敵の裏返しになっている手札がグーチョキパーの手ごとに色分けされたり、自分の手札に関係なく特定の手を出せたりとその効果は抜群。負けられない時は惜しみなくフルーツを投入すべきだ。
そのためには栽培用の栄養剤を買って、盆栽ルームでこれをセットし、フルーツが実ったら忘れずに収穫するといった準備が必要となる。強力なフルーツでゴリ押しすることもできるが、副作用としてサンダーとカイラが年を取った姿になるというペナルティが本作らしい。
本作は、アメコミ風のエイリアンたちが入り乱れる、懐かしい雰囲気のスペースオペラ感が、16ビット時代風のアドベンチャーゲームとして表現されるという明確なコンセプトを持った作品である。当時を知る人には懐かしく、そうでない人には新鮮な驚きがあるはずだ。ぜひ一度、魅力的なその世界観を味わっていただきたい。
【ゲーム情報】
■OMEGA 6 THE TRIANGLE STARS
・ジャンル:レトロフューチャーアドベンチャー
・プラットフォーム:Nintendo Switch / Steam
・Nintendo Switch版 発売中、Steam版 2025年発売予定
・価格:Nintendo Switchダウンロード版 2,970円(税込)、パッケージ通常版価格 3,850円(税込)、パッケージ特装版価格 8,470円(税込)、パッケージ特装版+画集&色紙セット価格 16,500円(税込)
・開発:ハッピーミール / プリオシーヌ
・発売:シティコネクション
・プレイ人数:1人
・レーティング:CERO:B(12才以上対象)
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